上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

フランスの色彩溢れる魅惑の三編


 新日フィルの3月のトパーズ・シリーズでは、音楽監督の上岡敏之が芸術の都パリをテーマにしたプログラムを組んでいる。フランス風の色彩感をどう聴かせるかというあたりがみどころだが、ドイツの劇場で長くキャリアを築いた上岡ならではのひねりも効いてきそうだ。

 まずはモーツァルトの交響曲第31番「パリ」。この曲は母と共にザルツブルクを離れ、マンハイムを経てパリにたどり着いたモーツァルトが久々に書いた交響曲。マンハイム楽派のスタイルを消化した上で、耳の肥えたパリの聴衆を満足させる堂々としたシンフォニーに仕上がっている。ドイツ流の音楽にフレンチの味付けを施した、とでも言ったらよかろうか。

 後半はマニャール「交響曲第4番」。マニャールはドビュッシーやサティと同世代に属し、第一次大戦で非業の死を遂げるまで、寡作ながら質の高い作品を残した。最後から二番目の作品番号を持つこの交響曲は、よく流れる旋律を煌びやかなオーケストレーションが彩っており、ゴージャスでドラマティックだ。ドイツの影響を消化した19世紀後半のフランス器楽運動が、20世紀に入りダンディに学んだマニャールにおいて美しく花開いた。隠れ名曲、再発見の起爆剤になりそうだ。

 ラヴェルの「ピアノ協奏曲」を弾くソロのクレール=マリ・ル・ゲは、着実なキャリアを積み表現の幅を広げてきた中堅で、パリ高等音楽院でも教鞭を執るなど、フランスを代表するピアニストとして存在感が増してきた。2つの骨太の交響曲に挟まれ、生粋のパリジェンヌが聴かせるエスプリが一層映えそうだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年2月号より)

第601回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
2019.3/22(金)19:00、3/23(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp/