16歳で渡仏し、パリ国立高等音楽院で学んだ横山幸雄による、久しぶりのフランスものの録音。円熟期のドビュッシーが書き上げた前奏曲集を、丁寧に冷静に音にしてゆくことで、ドビュッシーならではのハーモニーの妙やそこから生まれる色彩をありありと浮かび上がらせる。〈西風の見たもの〉や〈沈める寺〉での気品の保たれたドラマティックな表現、〈雪の上の足跡〉での聴き手を吸い込むような静けさの表現も魅力。情熱的だが、透明感があってどこかひんやりとした感触の音が、作品によく合う。甘すぎないドビュッシーの美しい世界が広がる。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2019年1月号より)
【information】
SACD『ドビュッシー:前奏曲集(全曲)/横山幸雄』
ドビュッシー:前奏曲集第1集・第2集
横山幸雄(ピアノ)
アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)
MECO-1052 ¥3000+税