ベートーヴェンの複合形式を参考にした約35分かかる巨大な弦楽四重奏は、高音域の音の雲から緻密な綾が絶え間なく紡ぎだされる。若手のクァルテット・レオーネが終始シャープな音像で描いている。続く「昼Ⅷ」は既存のクラリネット独奏曲、フルートとチェロの二重奏を組み合わせ、さらに三重奏部を書き足した。三重奏「工房より」は新しい創作フェーズのスタートで、逆に「波はささやき5」は、このシリーズの完結編であると同時に本盤を締めくくるロンド楽章の役割を果たす。“ワーク・イン・プログレス”的な南の音楽思考が、作品の完結性を重視する古典の“型”とキメラのような融合を果たした。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年12月号より)
【information】
CD『南聡 作品集 Second Air…/クァルテット・レオーネ 他』
南聡:第2アリア…(弦楽四重奏)、昼Ⅷ、「工房より/1a. 頭部」、「波はささやき5/ロンド・カプリチオーソ」
クァルテット・レオーネ
多久潤一朗(フルート) 有馬理絵 菊地秀夫(以上クラリネット) 豊田庄吾 松本卓以(以上チェロ)甲斐史子(ヴァイオリン) 大須賀かおり(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-119 ¥2800+税