アントニ・ヴィト(指揮) 東京都交響楽団

祖国ポーランドの傑作を携えて都響初登場!


筆者がアントニ・ヴィトの名前を知ったのは、1990年代にナクソスから続々とリリースされたディスクを通じてである。シマノフスキら東欧の珍しい作品のみならず、ルトスワフスキやペンデレツキといった前衛までもカヴァー。しかも驚いたことに、どれも演奏水準が高かった。だが今にして思えば、その後の世界各地への客演も含め、実力に評価が追いついたという話にすぎない。ヴィトはポーランド国立放送響のシェフ(1983〜2000)を務めた後、ワルシャワ国立フィルを率いている(2002〜13)が、それはつまり共産圏が鉄のカーテンによって閉じられていた時代からずっと、この国の最高のポジションにあったということなのだ。
さて、9月にはこの名匠が都響の定期に初登場、自国にちなんだプログラムを聴かせる。ポーランド民謡のテイストが生きたワーグナー初期の序曲「ポローニア」の祝祭的な華やかさはオープニングにぴったりだ。ポーランドといえばショパンだが、今回は2015年ショパン・コンクールで第2位を獲得したシャルル・リシャール=アムランのソロでピアノ協奏曲第2番を披露。パリに移住する以前のポーランド時代に作曲され、ワルシャワで初演されている。
ポーランドは共産圏では珍しく前衛音楽が盛んな国だった。ルトスワフスキの交響曲第3番(1983)は先鋭的な書法を用いながらもドラマティックに構成され、現代ものを得意とする人気指揮者たちがこぞって取り上げている。ポーランドにとどまらず、時代を代表する作品なだけに、作曲者と同じ時代の空気を吸ってきたヴィトの解釈が楽しみだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年8月号より)

第860回 定期演奏会 Bシリーズ
2018.9/6(木)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
http://www.tmso.or.jp/