ショスタコーヴィチの5番は佐渡と特に相性がよい曲。第1、第3楽章ではどっしり巨匠的な表現が生き、またスケルツォや終楽章ではスポーティーな運動性が前面に押し出される。特にフィナーレはオケをコンパクトにドライヴしながら進め、速度を落とした後、燻すように膨らませて輝かしいクライマックスを導く。トーンキュンストラー管は引き締まったサウンドで軽重を使い分け、佐渡のイメージを着実に音にしている。「舞台管弦楽のための組曲」は映画音楽やワルツ、ポルカを集めたもので、軽やかでユーモラスな足取りにも佐渡の面目が躍如。聴いているこちらの心もついつい弾む楽しい演奏だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年7月号より)
【information】
CD『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/佐渡裕&トーンキュンストラー管』
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、舞台管弦楽のための組曲(ジャズ組曲第2番)
佐渡裕(指揮)
トーンキュンストラー管弦楽団
エイベックス・クラシックス
AVCL-25959 ¥2000+税