ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

“イタリア”にちなむ爽快で冴えたプログラム


 首席指揮者ピエタリ・インキネンと日本フィルが6月の東京定期演奏会で披露するのは、メンデルスゾーンとシューベルトを並べたロマン派音楽のプログラム。これまでブルックナーやワーグナーといった大曲で評判を呼んできたインキネンだが、今回はロマン派時代にあって古典的スタイルをリスペクトした二人の作曲家をとりあげる。
 キーワードは“イタリア”。シューベルトのイタリア風序曲第2番、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲第2番と交響曲第4番「イタリア」の3曲が演奏される。シューベルトのイタリア風序曲第2番は、当時ウィーンで大旋風を巻き起こしていたロッシーニからの影響がうかがえる作品。内気なシューベルトが底抜けの陽気さを装うかのような面白さがある。イタリアからの風に吹かれたシューベルトに対して、メンデルスゾーンは自らイタリアに赴いて現地の芸術や自然に触れた作曲家。旅先から受けたインスピレーションは、交響曲第4番「イタリア」という大傑作に結実した。イタリアの舞曲サルタレッロが用いられた終楽章はスリリング。インキネンと日本フィルのコンビが清新な演奏を聴かせてくれることだろう。
 メンデルスゾーンのピアノ協奏曲第2番で独奏を務めるサリーム・アシュカールは、近年デッカ・レーベルでこの曲をシャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とともに録音した実力者。多面的な性格を持つこの協奏曲の魅力を存分に味わいたい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年5月号より)

第701回 東京定期演奏会
2018.6/15(金)19:00、6/16(土)14:00 サントリーホール
問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
http://www.japanphil.or.jp/