大野和士(指揮) 東京都交響楽団

新シーズンはマーラーの大シンフォニーで開幕


 大野和士の都響音楽監督もこの春をもって3期目に入るが、新シーズンの幕開けにマーラーの交響曲第3番をぶつけてきたあたりに、手応えが確かなものへと成長しているのを感じる。なんといってもこれは4管編成の巨大管弦楽にアルト独唱、女声・児童合唱が加わり、2部6楽章構成、100分近くを要する“メガ交響曲”なのだ。当初作曲家が考えていたのは、牧神の目覚めと活力に満ちた夏の到来、花々や動物といった自然界との交歓、夜の瞑想、天使との交流を経て、愛の認識へ至るという気宇壮大な物語だった。一口でいうなら、マーラーはここで交響曲という器に世界の森羅万象を盛ったのである。
 大野&都響は2016年11月には交響曲第4番を演奏、さらに来年1月には「子供の不思議な角笛」を取り上げる。第3番・第4番は「角笛交響曲」と呼ばれるほどこの歌曲集と密接につながっているから、これは足掛け4年にわたって構想されたプログラミングの中間章なのだ。海外の歌劇場を長年にわたり率いてきた大野は、歌とドラマの生理を知り尽くしている。2年を経て充実期に移行しつつある両コンビに、これから訪れるであろう“暑い夏”を予感させるオープニングになるのではないか。
 アルト独唱はフィンランドのベテランで、マーラーの解釈ではとりわけ国際的に評価の高いリリ・パーシキヴィ。このところ在京オケの定期公演などにも頻繁に招かれており、また大野ともすでにヨーロッパの歌劇場で共演、信頼関係を築いている。合唱には鉄壁のアンサンブルを誇る新国立劇場合唱団、児童合唱には70年近い伝統を持つ東京少年少女合唱隊が参加。万全の布陣だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年3月号より)

第852回 定期演奏会 Aシリーズ 
2018.4/9(月)19:00 東京文化会館
第853回 定期演奏会 Bシリーズ 
2018.4/10(火)19:00 サントリーホール
問 都響ガイド0570-056-057 
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