ファツィオリで聴くコンサートシリーズ アンジェラ・ヒューイット(ピアノ)

バッハを巡る壮大なプロジェクトがスタート

©Peter Hundert
 1985年のトロント国際バッハ・ピアノ・コンクール優勝でキャリアをスタートし、優れたバッハ弾きとして知られるカナダのピアニスト、アンジェラ・ヒューイット。彼女が、4年間、全12回でJ.S.バッハの全ソロ鍵盤作品を演奏するリサイタルシリーズ『The Bach Odyssey』を日本でもスタートさせる。ニューヨーク、ロンドンでは一足先に行われ、すでに大きな反響を得ているそうだ。
 第1弾は、5月29日、30日の2夜にわたって紀尾井ホールで開催。1日目『Odyssey 1』で取り上げるのは、バッハの若き日に書かれたカプリッチョ「最愛の兄の旅立ちにあたって」「ヨハン・クリストフ・バッハをたたえて」などと、30代半ば以降に書かれた「インヴェンションとシンフォニア」、「幻想曲とフーガ BWV904」などを組み合わせたプログラム。一方、2日目『Odyssey 2』では、フランス組曲の第1番から第6番が演奏される。美しく絡み合う複数の旋律、優美で洗練された舞曲の雰囲気を、どこまでも自然な円熟の表現で聴かせることだろう。
 ヒューイットは日ごろから、近年ますます評価を高めているイタリアのピアノメーカー、ファツィオリの楽器を愛奏しているが、本シリーズでもピアノはファツィオリを使用。チェンバロ風の軽快な響き、オルガン風のふくよかな響きを、その色彩豊かな音色を生かしていかに表現するのかも楽しみだ。バッハ弾き、そしてファツィオリ弾きのヒューイットならではの音に期待しつつ、4年にわたる旅のスタートの場に居合わせたい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

Odyssey 1 5/29(月)19:00
Odyssey 2 5/30(火)19:00
紀尾井ホール
問:日本アーティストチケットセンター03-5305-4545
http://www.nipponartists.jp/