
2024年にパリで開催された第17回アルベール・ルーセル国際ピアノコンクールで優勝、同時に聴衆賞にも輝いたジャンミッシェル・キムは、1989年東京生まれ。東京音楽大学とパリ国立高等音楽院で学んだ。近年はパリのサル・コルトーでのリサイタルが現地の音楽誌『クレッシェンド』で取り上げられ、豊かな音色のパレットと個性的な解釈眼が高く評価された。室内楽や声楽伴奏にも力を注ぎながら、詩情豊かな音楽性に磨きをかけている。
今回のリサイタルは「バッハからラフマニノフへ、光と影の系譜」と題し、大阪(門真)、長野、東京の3都市で開催される。幕開けのJ.S.バッハ「幻想曲」BWV906は、華麗な書法と躍動感に満ちており、バッハの鍵盤作品のなかでも異彩を放つ名曲だ。そこにベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」とショパンの「幻想ポロネーズ」を続け、自由な楽想と劇的な展開を提示する。さらに東京・長野公演ではラヴェルの「夜のガスパール」、大阪公演ではリストの「死の舞踏」を取り上げる。いずれも超絶技巧によって幻想と怪奇の世界が描かれ、キムの陰影と光彩のコントラスト豊かなピアニズムを堪能できるだろう。締めくくりのラフマニノフ「コレルリの主題による変奏曲」は、古典的主題を通じて内省と情熱が交錯する名作だ。バロックの均整からロマン派のドラマ、近代の幻想性まで、時代を横断しながら光と影を巡る旅路を、キムのしなやかな解釈で堪能したい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2026年10月号より)
ジャンミッシェル・キム ピアノリサイタル
2026.10/25(日)14:00 大阪/門真市民文化会館ルミエールホール(小)
11/6(金)19:00 長野市芸術館 リサイタルホール
11/8(日)14:00 TOPPANホール
問 ジャンミッシェル・キム 日本コンサート090-6472-3734
https://jeanmichelkim.com

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。
