
右:横山幸雄 ©Shin Yamagishi
ドビュッシーとプロコフィエフで幕を開けた野口千代光と横山幸雄のデュオ・シリーズ。その第2回では、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲に臨む。3つのソナタを一夜でたどるプログラムからも、二人の対話の深さがうかがえる。
第1番ト長調 op.78は、クララ・シューマンの末子フェリックスが世を去った1879年に完成した。終楽章に自作歌曲〈雨の歌〉と〈余韻〉の旋律が引用され、雨が遠い記憶を呼び覚ますその響きに、フェリックスへの哀惜とクララへの思いが刻み込まれている。第2番イ長調 op.100は1886年、スイスのトゥーン湖畔で完成。3楽章の簡潔な構成に穏やかな親密さが宿る。ほぼ同時に着手された第3番 op.108は、前2作とは対照的なニ短調の厳しさを備え、2年後に完成した。
東京藝大教授、アンサンブル・ノマドの中心も担う野口と、デビュー35周年を迎えた横山。高校時代から40年近く交流を重ねてきた二人が、これら3曲を通して、ブラームスが言葉ではなく音楽に託したものに向き合う。
文:足立優司
(ぶらあぼ2026年10月号より)
野口千代光/横山幸雄 デュオ・リサイタル Vol.2
2026.10/7(月)19:00 Hakuju Hall
問 キーノート0422-44-1165
https://www.keynotemusic.jp

足立優司 Yuji Adachi
三鷹市芸術文化センターを経て2007年いわきアリオスに着任。2011年の震災と原発事故の後、音楽によって混迷する地域社会の再構築に取り組む。学芸員資格を有し、「音楽学芸員」の認知向上にも尽力。音楽を、言語や立場の差異を越え共有し得る「非言語的な公共性」と捉え、分断をつなぎ止める場として社会と音楽の関係を問い続けている。現在、山形交響楽団事務局参与。2026年5月より東京藝術大学音楽学部特任助教に就任。
