日本フィルハーモニー交響楽団は9月9日、2027-2028シーズン(27年4月〜28年3月)の定期演奏会ラインナップを発表した。今年、創立70周年を迎えた同楽団にとって、次の時代へ踏み出すシーズンとなる。東京・横浜ともに全10プログラムが組まれ、首席指揮者カーチュン・ウォンを軸に、楽団と縁の深い指揮者からフレッシュな顔ぶれまでが揃う。なお、例年サントリーホールで行われている東京定期に関しては、同ホールの改修工事(27年3月~8月)に伴い、4・5・7月は東京芸術劇場 コンサートホール、6月は東京オペラシティ コンサートホールで開催される。

まず注目したいのは、カーチュンがあわせて6プログラムを指揮すること。東京定期の9月公演では、マーラーの交響曲第7番「夜の歌」とともに、桑原ゆうへの委嘱新作を世界初演する。2021年に芥川也寸志サントリー作曲賞を受賞、その後イギリスの音楽レビューサイト「Bachtrack」で“2023年注目の女性作曲家8人”に選出されるなど、国際的に活躍を広げる気鋭作曲家・桑原の音世界をどのように現前させるだろうか。11月には独唱・合唱・児童合唱(調整中)を擁するブリテンの大曲「戦争レクイエム」を披露、翌28年3月にはマーラーの交響曲第10番より「アダージョ」とブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を並べるなど、骨太のプログラムが目を引く。
横浜定期でもカーチュンの意欲的な選曲が光る。9月にはセルゲイ・クリーロフとのプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番に、早坂文雄の「古代の舞曲」&マーラー編曲によるベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を組み合わせ、その1ヵ月後にはチェロ協奏曲第1番(独奏:ヤン・フォーグラー)、交響曲第10番のオール・ショスタコーヴィチ・プログラムを披露。翌年1月には、ショパンコンクールを経てさらなる飛躍を遂げる桑原志織とラフマニノフのピアノ協奏曲第3番で共演、後半ではプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」をカーチュン自身の抜粋版で聴かせる。
カーチュン以外の指揮者陣も、持ち味を生かしたプログラムで楽団の新たな一歩を盛り立てる。桂冠名誉指揮者・小林研一郎は、シベリウスの交響曲第2番(10月東京定期)やベートーヴェンの交響曲第6番「田園」(11月横浜定期)など、十八番での直球勝負。フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)の広上淳一は、東京定期の幕開け(4月)と横浜定期の締めくくり(28.3月)を担い、前者では米元響子との尾高惇忠のヴァイオリン協奏曲、後者では阪田知樹とのガーシュウィンのピアノ協奏曲 ヘ調……と、日本が誇る名手たちを迎えて濃密な楽曲で魅せる。また、かつて正指揮者を務めた山田和樹は、28年1月東京定期でアイネム「フィラデルフィア交響曲」やコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲(独奏:扇谷泰朋[同楽団ソロ・コンサートマスター])など、一ひねり効いたプログラムでニューイヤーを祝う。

客演勢も、注目株・碇山隆一郎の定期デビューから、大植英次や沼尻竜典、下野竜也、西本智実らベテラン陣の登場、そして巨匠・尾高忠明がベートーヴェン没後200年に臨む渾身の「第九」まで、話題に事欠かない。今年のフェスタ サマーミューザで初共演を果たしたクリストフ・コンツ(元ウィーン・フィル第2ヴァイオリン首席)とのワーグナー「言葉のない《指環》」(マゼール編)や、ここ数年で楽団との信頼を深めるフランソワ・ルルーによるオーボエの吹き振りにも期待が高まる。
70周年という大きな節目を越え、受け継いできたレパートリーと新たな挑戦を両輪に据えた2027-2028シーズン。日本フィルが次の10年へ向けてどのような響きを積み上げていくのか、各定期で確かめたい。
文:編集部
日本フィルハーモニー交響楽団
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