
1989年、ハンブルク生まれのアレクサンダー・クリッヒェル。理論的な思考と、自由な感性に従う表現が絶妙なバランスで融合し、確信に満ちた音楽を聴かせるピアニストだ。ロシア系の名教育者、故・ウラディーミル・クライネフの最後の愛弟子の一人であり、「先生の強烈な指導によって、自分の価値観を信じて判断する能力が育てられた」と話していた。
今回演奏するのは、得意とするドイツ音楽とロシア音楽を中心としたプログラム。シューベルトのピアノ・ソナタ13番から、シューマンやシューベルトの歌曲のリスト編曲作品、メンデルスゾーン、リスト、そしてプロコフィエフの「戦争ソナタ」第7番とバラエティに富む。昨年の7年ぶりの来日リサイタルでは、作品ごとに別人のような様相を見せていて驚いた。今回も、詩的でなめらかな歌からリズミカルで力強く感情をぶつける表現まで、それぞれの楽曲の世界観によせる変貌ぶりを存分に発揮してくれるだろう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2026年9月号より)
第575回 日経ミューズサロン
アレクサンダー・クリッヒェル ピアノ・リサイタル 「技巧と詩情の結晶」
2026.10/14(水)18:30 日経ホール
問 日経公演事務局03-5227-4227
https://art.nikkei.com

高坂はる香 Haruka Kosaka
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体で記事を執筆。また、ポーランド、ロシア、アメリカなどで国際ピアノコンクールの現地取材を行い、ウェブサイトなどで現地レポートを配信している。
現在も定期的にインドを訪れ、西洋クラシック音楽とインドを結びつけたプロジェクトを計画中。
著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」http://www.piano-planet.com/
