ヨーロッパの歌劇場で華々しい活躍をした経験をもつバリトン歌手、小森輝彦。劇的だった前作「冬の旅」に続き、シューベルトの遺作たる「白鳥の歌」を歌う。語り手という立場からフレーズに感情を込めていくのではなく、小森はまるでオペラの登場人物に成り切ったかのように、強い感情表現で聴き手を揺さぶる。〈春への憧れ〉は、複数の人が歌っているかのように表情変化が著しく、〈遠い地で〉でのド迫力。重厚な〈ドッペルゲンガー〉でも決して冷たくならず、生暖かな感情を込める。そして、そんなエモーションをあふれないように、きちっと器に収めてくれる宮﨑貴子のピアノ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年9月号より)
【information】
CD『シューベルト:白鳥の歌/小森輝彦&宮﨑貴子』
シューベルト:歌曲集「白鳥の歌」、ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスター』から「竪琴弾きの歌」
小森輝彦(バリトン)
宮﨑貴子(ピアノ)
日本アコースティックレコーズ
NARD-5090 ¥3080(税込)

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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