
右:奥井紫麻 ©Takahiro WATANABE
創立51年目のシーズンも快走を続ける東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。10月の第387回定期演奏会は2015年から常任指揮者を務める(長期安定政権だ!)高関健の指揮、奥井紫麻のピアノでロシア音楽を特集する。
高関と奥井は25年1月17日の第375回定期にてサン=サーンス「ピアノ協奏曲第2番」で共演、スリリングかつ輝かしい成果で会場が沸いたのも記憶に新しい。2004年生まれの奥井は12歳でロシア留学、さらにスイスで研鑽を続け10代から日本、ヨーロッパのステージで頭角を現してきた。今回の再共演では自身も原点と考えるロシア・ピアニズムの王道で成果を問う。プロコフィエフのピアノ協奏曲中では第3番が圧倒的に有名だが、唯一の短調作品の第2番は前衛の限りを尽くし、演奏の難易度も極端に高い。奥井の技がとことん冴えるはずだ。
後半はムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」。早逝した友人の画家ハルトマンを追悼するピアノ独奏曲が原曲ながら、往年の富豪指揮者クーセヴィツキーがラヴェルに依頼した色彩豊かな管弦楽編曲版の成功で名曲の仲間入りをした。他にもストコフスキー、ヘンリー・ウッド、近衛秀麿などの編曲が存在するなか、「楽譜マニア」の高関が敢えてラヴェル版を選んだからにはきっと、原曲も究めた上での様々な仕掛けを施してくるに違いない。演奏会冒頭には武満徹が南半球の先住民族アボリジニの神話に基づき1981年に作曲した「夢の時」が置かれ、日本を代表する作曲家の没後30年を思う。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2026年7月号より)
高関健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第387回 定期演奏会
2026.10/10(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp

池田卓夫 Takuo Ikeda(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
1988年、日本経済新聞社フランクフルト支局長として、ベルリンの壁崩壊からドイツ統一までを現地より報道。1993年以降は文化部にて音楽担当の編集委員を長く務める。2018年に退職後、フリーランスの音楽ジャーナリストとして活動を開始。『音楽の友』『モーストリー・クラシック』等に記事や批評を執筆する他、演奏会プログラムやCD解説も手掛ける。コンサートやCDのプロデュース、司会・通訳、東京音楽コンクール、大阪国際音楽コンクールなどの審査員も務める。著書に『天国からの演奏家たち』(青林堂)がある。
https://www.iketakuhonpo.com


