“日本の心”を歌う ―― 第6回平井康三郎声楽コンクールが出場者を募集

©Terufumi Ueno

 〈とんぼのめがね〉〈ゆりかご〉などの名作で知られる作曲家の平井康三郎(1910〜2002)。彼の歌曲のみを課題にした平井康三郎声楽コンクールが今年で第6回を迎える。実行委員長で指揮者・作曲家として活動する平井秀明(康三郎の孫)によれば、年々参加者が増え、ハイレベルの入賞者たちを輩出してきたという。

 「昨年も1位から3位まですぐれた入賞者を選ぶことができました。入賞者披露コンサート開催にあたり、審査員から新たに指導を受け、各自がさらにレベルアップできるのも、当コンクールの特徴だと思います」

 平井の歌曲は300曲以上あるというが、第1次、第2次予選、本選まで名作から知られざる作品まで様々な課題曲がラインナップ。応募者は自身の声に合わせて選択する。

 「今回新たに課題になったのは7曲ですが、〈平城山〉〈九十九里浜〉などみなさんがよくご存じの曲も入っています。第1次、2次予選には歌曲集『日本の花』から2曲入れています。名作ですがあまり歌われませんので、この機会にぜひみなさんに知っていただきたいですね。本選の『三つの輓歌』は表現力を要する作品です。同じく本選課題曲には演奏効果が高い〈フグなんてフグなんて〉や、祖父自身会心の作としていた組曲『ひとり歌へる』(由比晋作歌)が今年から新たに加わりました」

 康三郎の生地は高知県のいの町。現在名誉町民となっており、「音楽が流れるまちづくり」の象徴的な存在だという。

 「いの町には第3回からコンクールに後援いただいています。町は自然豊かで四万十川をしのぐ清流である仁淀川、伝統的な和紙などで知られています。また土佐ならではの明るく豪快な県民性は祖父にも受け継がれているようにも思います。2023年からは当地での音楽祭にて入賞者のお披露目も行いました」

 平井は歌曲においてピアノの役割も重要だと考えていたという。

 「祖父は、歌曲とは歌とピアノとが対等な関係で作り上げていく日本語による究極のリート(芸術歌曲)だと言っていました。祖父の歌曲では声楽の表現力も大切ですが、ピアノも歌うことが必要ですね。今回のコンクールを通じて、日本人の心の表現でもある祖父の歌の世界にとりくみ、新たな魅力を発見していただきたいと思います」

 第1次、第2次予選の会場である梅窓院は康三郎の墓のある場所で、祖師堂のホールのベヒシュタインは彼も弾いたピアノ。作曲家・平井康三郎の名歌曲の世界をつうじて新たな才能が発掘されるのを楽しみにしたい。

取材・文:伊藤制子

(ぶらあぼ2026年7月号より)

第6回平井康三郎声楽コンクール
第1次予選(関西) 2026.9/24(木) 京都/レスパス・エラン
第1次予選(東京) 9/29(火)〜10/1(木) 梅窓院・祖師堂
第2次予選 10/3(土)11:00 梅窓院・祖師堂
本選 10/6(火)14:00 渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール
入賞入選記念コンサート 11/7(土)17:00 梅窓院・祖師堂
問:平井康三郎声楽コンクール実行委員会事務局03-6403-9846

https://www.arioso.co.jp
※コンクール応募締切:7/31(金)。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


伊藤制子 Seiko Ito(音楽学・音楽評論)

東京藝大、同大大学院修了。現在、東邦音大・同大学院、静岡文化芸大、日大講師。日仏の20世紀以後の音楽、音楽美学を研究するかたわら、音楽評論、海外オペラ取材なども行う。2017年のモンテヴェルディ生誕450年イヤーにヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場のモンテヴェルディ三部作の上演を取材。音楽以外のライフワークは旅と俳句。奈良、ヴェネツィアなどで史跡を探索するのが趣味。