
右:過去の「室内楽ホールdeオペラ」公演より ©池上直哉
オペラの花形といえばアリア、そんな既成概念をひっくり返してみせるのが林美智子プロデュースの「室内楽ホールdeオペラ」だ。なんとすべてのアリアをカットし、「重唱」のみで再構成するという斬新な企画である。これまでにモーツァルトのダ・ポンテ三部作(《フィガロの結婚》《ドン・ジョヴァンニ》《コジ・ファン・トゥッテ》)の上演を成功に導き、いよいよ今年9月に《魔笛》が上演される。
アリアという「聴きどころ」をカットしてオペラが成立するのか? と問われれば、答えはYES。「アリアは登場人物の心情を深く表す大切な場面ですが、物語の流れは一度止まりますよね」と林が語るとおり、物語を前に進めるのはレチタティーヴォや、複数の登場人物のドラマが交差する重唱だ。「室内楽ホールdeオペラ」では毎回、日本語の台詞で重唱をつないでいくオリジナルのダイジェスト版を林みずから書き下ろしているが、《魔笛》はもともと台詞のあるジングシュピールなので、そういったスタイルにより合っているかもしれない。
キャスティングも、当シリーズには常連のベテランから注目の若手までバラエティ豊か。パミーナの松原みなみ、タミーノの本多信明、夜の女王の小川栞奈は、いずれも林が共演したり演奏に触れたりしたなかで感銘を受けた歌い手とのこと。パパゲーノの黒田博はこれ以上ないはまり役。そして侍女と童子の3人組(澤畑恵美、石田滉、清水華澄)の重唱にもご注目を。
オペラは「声のアンサンブル」であることを、包まれるような響きの第一生命ホールで味わえば、新たな楽しみ方を発見できるに違いない。
文:原 典子
(ぶらあぼ2026年6月号より)
室内楽ホールdeオペラ 林 美智子の『魔笛』!
2026.9/19(土)、9/21(月・祝)各日13:30 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク 03-3532-5702
https://www.triton-arts.net

原 典子 Noriko Hara
音楽ジャーナリスト/編集者/ライター。上智大学文学部新聞学科卒業。音楽之友社『レコード芸術』編集部、音楽出版社『CDジャーナル』副編集長を経て、フリーランスに。坂本龍一監修の音楽全集『commmons: schola』の編集を担当。2021年にWebメディア『FREUDE』を立ち上げる。アーティスト・インタビューやレビュー記事執筆のほか、公演プログラムや企業オウンドメディアの編集、コンサートの企画運営などを行なっている。鎌倉在住。
https://freudemedia.com
