佐藤俊介(ヴァイオリン/指揮)が第57回サントリー音楽賞を受賞

 公益財団法人サントリー芸術財団が、日本における洋楽の発展に貢献した個人や団体を顕彰する「サントリー音楽賞」の第57回(2025年度)の受賞者が、ヴァイオリニストで指揮者の佐藤俊介に決定した。賞金は700万円。

Shunske Sato photo:Eduardus Lee

 佐藤は、ヨーロッパを拠点にピリオド、モダンの双方で活躍するヴァイオリニスト・指揮者。東京に生まれ、4歳の時に米国へ移住。ジュリアード音楽院、パリ国立地方音楽院、ミュンヘン音楽演劇大学で学んだ。2010年、ライプツィヒで行われた第17回ヨハン・セバスティアン・バッハ国際コンクールで第2位および聴衆賞受賞。

 2013年から23年まで、オランダ・バッハ協会のコンサートマスターを務め、18年からは音楽監督も兼務した。また、2011年からはコンチェルト・ケルンのソリスト、指揮者、コンサートマスターを務めている。

 歴史的アプローチは、バロックや古典派のみならず19世紀の音楽にもおよび、昨年自ら「PastForward Ensemble」を創設。ロマン派音楽が本来持つ即興性や主観性、荒々しさ、エネルギーといった原点を現代に取り戻し、単なる歴史や様式ではなく「いまを生きる音楽」として再生する——その想いに共感したヨーロッパを拠点とする経験豊富な音楽家たちによって結成された。

 日本においては近年、私生活のパートナーでもあるスーアン・チャイ(フォルテピアノ)とのデュオで、呼吸に根差した緻密かつ柔軟なフレージングにより、語りかけるような自然さを湛えた演奏で多くのファンを惹きつけている。また、東京交響楽団には弾き振りでたびたび登場し、ヴァイオリニストとしてのみならず指揮者としても、躍動感あふれる切れ味鋭い鮮やかな音楽を披露している。

<贈賞理由>
 古楽か、モダンか。佐藤俊介は、そうした問いや対立を、過去のものにする可能性を秘めたパイオニアである。
 奏法、楽譜、楽器、そうした過去のものに対する敬意と健やかな好奇心を、無限の創造の糧とする。そんな古楽の究極の目的は、人間の普遍性の探究といえるだろう。国境や時代を超え、「人間」そのものを掘り下げる。ゆえに、多様性の宝庫となる。
 佐藤は10代の頃、米国で古楽への関心を抱いた。研鑽ののち、今は古楽器とモダン楽器の両方を、分け隔てなく自身の声としている。卓越した国際感覚と語学力も、世界中の音楽家との柔軟なコミュニケーションを促進する礎となった。オランダ・バッハ協会第6代芸術監督を経て、演奏、指揮、指導、教育を通じ、世界各地で自らを飛躍させつつ、次代の才能を育てている。
 そうした歩みが昨今、日本の音楽シーンにもさまざまな恵みをもたらしている。
東京交響楽団への客演は、聴衆以上に奏者たちにセンセーショナルな目覚めをもたらした。東京藝大チェンバーオーケストラへの指導、およびみずみずしい即興精神にあふれるスリリングな弾き振りは、若い奏者たちの視野を大きく世界へと開かせ、音楽に生きる人生の幸福を再認識させるものとなった。フォルテピアノのスーアン・チャイと各地で敢行したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏も、遊び心と挑戦心を前面に出し、受け身ではない能動的な「聴き方」を聴衆に提案。音楽業界を大いに触発した。
 そして昨年、満を持してロマン派以降の音楽を主な対象とする古楽オーケストラ「Past Forward Ensemble(PFE)」を創設。今年5月、独ケルンで船出する。過去へと向かう探究心を、未来を編む力とする。そんな志を託された名称の通り、あらゆる偏見や先入観を取り払い、より自由な精神で、音楽と人々を連ねてゆくことを目指している。
 分断に歪み、混迷を深めるいまの時代において、佐藤は芸術家にしかできないことをきわめてアクチュアルに示し続けている。楽しむだけではなく、思考を突き動かすためにこそ、音楽を。今回の贈賞は、そうした佐藤のビジョンを照らし、クラシック音楽の未来の一翼を担うひとりとして、今後の歩みへの期待を示すものである。
(吉田純子 選考委員)

【今後の出演予定】
神戸市室内管弦楽団
Selection Vol.9「ヴィヴァルディ《四季》」

9/26(土)15:00 神戸朝日ホール

オーケストラ・アンサンブル金沢
第504回定期公演マイスター・シリーズ

2026.10/3 (土) 14:00 石川県立音楽堂

関西フィルハーモニー管弦楽団
住友生命いずみホールシリーズVol.65
鈴木優人のベートーヴェン・ヒストリー6

2027.3/5(金)19:00 住友生命いずみホール

サントリー音楽賞
https://www.suntory.co.jp/sfa/music/prize/
佐藤俊介
https://www.shunskesato.com