ソヒエフとN響との相性は抜群。国内トップオーケストラがもつポテンシャルをここまで鮮やかに引き出す指揮者はそうそうおるまい。各声部に明確に与えられた表情。そして半端ない情報量。今回のショスタコーヴィチも、完璧な楽器バランスから生み出される、絢爛といっていいほどの響きの綾。破れかぶれに突進するようなショスタコ演奏を期待すると、その立派な組み立てに面食らうことは間違いない。冒頭楽章、これだけ立体的に立ち上がる戦争の主題は聴いたことがないほど。第3楽章の中間部への流れ込みも堅実な運びだ。シニカルに感じられがちな終楽章のコーダだって、荘厳そのもの。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年3月号より)
【information】
SACD『ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニング ラード」/トゥガン・ソヒエフ&N響』
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」
トゥガン・ソヒエフ(指揮)
NHK交響楽団
収録:2025年1月、NHKホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00910 ¥3850(税込)

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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