文京シビックホール「響きの森クラシック・シリーズ」2026-27シーズンの聴きどころ

 昨年10月〜11月にかけて7ヵ国8公演のヨーロッパ・ツアーを成功させ、歴史あるオーケストラらしい実力と今後の可能性を改めて示した東京フィルハーモニー交響楽団。同楽団と文京区、文京シビックホールとの事業提携により実現した「響きの森クラシック・シリーズ」は毎回さまざまな著名指揮者と話題のソリストが登場し、上質な音楽を届けてきた人気公演だ。その2026-2027シーズンのラインナップが出揃った。

左上より:原田慶太楼 ©kumiko suzuki/中川優芽花 ©Susanne Diesner
川瀬賢太郎 ©Tomoko Hidaki/天野 薫 ©仙台国際コンクール事務局/竹澤恭子 ©松永 学

 Vol.88のソリストはピアノの中川優芽花。2001年ドイツ生まれの若手ながらすでに多くのコンクールや演奏会で活躍している。昨年のショパン国際ピアノコンクールのライブ・ストリーミングで彼女の全身全霊を込めた演奏姿を目にして強い印象を受けた人も多いだろう。本公演では難曲として知られるラフマニノフの協奏曲第3番に挑む。この名作と中川の情熱的な表情の融合による、ほとばしるような名演が期待される。管弦楽曲はムソルグスキーの「展覧会の絵」。アメリカを拠点として精力的に活動する原田慶太楼の指揮により、常にも増してエネルギッシュで色彩豊かな音響が引き出されることだろう。

 Vol.89には二人のソリストが登場。ピアノの天野薫は2013年生まれ。昨年の仙台国際音楽コンクールのピアノ部門において、小学6年生にして第3位および聴衆賞を受賞し一躍注目を集めた。9歳で初リサイタルを開き、すでに海外での公演やプロ・オーケストラとの共演もこなしている才能の持ち主だ。協奏曲第9番はモーツァルト青年期のザルツブルクで書かれた名作で、天野のみずみずしい感性がそれとどう対峙するかが楽しみだ。もう一人のソリスト・竹澤恭子も幼くして頭角を現した天才だが、その後の世界的な活躍は周知のとおり。こちらは風格あるブルッフの名協奏曲を聴かせてくれる。指揮は多くの管弦楽団から厚い信頼を得ている川瀬賢太郎。

左より:小林研一郎 ©山本倫子/服部百音 ©YUJI HORI/ケンショウ・ワタナベ ©Abigel Kralik/鳥羽咲音 ©Julia Wesely

 Vol.90では“シリーズの顔”であるマエストロ・小林研一郎がタクトを振る。チェコ・フィルの常任客演指揮者を務め、東欧の音楽と生活が完全に血肉となっている彼がドヴォルザークの名曲「新世界より」を聴かせる。彼にとってこの曲を振るのは何度目になるのか想像もつかないが、なおこの作品の神髄を伝えていきたいという熱い思いが伝わる。マエストロ渾身の演奏をしかと味わいたい。ソリストにはヴァイオリンの服部百音を迎えて、チャイコフスキーの協奏曲を披露する。各種公演に引っ張りだこで、すでに巨匠の風格を漂わせる服部だが、まだ20代の伸び盛り。豪華絢爛なチャイコフスキーの音楽を情感豊かに再現してくれるだろう。

 Vol.91のソリストはチェロの鳥羽咲音。2005年ウィーン生まれでベルリン芸術大学在学中の彼女も注目の若手演奏家だ。多くのコンクールで入賞、優勝を重ね、積極的にソロ活動をおこなう一方、すでにNHK交響楽団ほか多くのオーケストラとの共演を果たしている。演奏曲はプロコフィエフ晩年の大作「交響的協奏曲」。いかにも現代的で無機的な感覚と叙情性をたくみに織り交ぜたこの難曲への鳥羽のアプローチが聴きどころだ。指揮者のケンショウ・ワタナベも近年飛躍を続け、とくに2024年にはメトロポリタン歌劇場の《ラ・ボエーム》や東京フィルハーモニー交響楽団「第九」公演の指揮でその評価を高めている。彼がセレクトする「ロメオとジュリエット」の組曲も聴きどころが満載だ。

 本シリーズのお得なセット券は例年大好評だという。今回の発売は3月31日まで。問い合わせはお早めに。

文:近松博郎

(ぶらあぼ2026年2月号より)

響きの森クラシック・シリーズ 2026-2027シーズン
【Vol.88】
2026.7/18(土)  
【Vol.89】9/26(土)
【Vol.90】2027.1/16(土) 
【Vol.91】2027.3/6(土)
各日15:00 文京シビックホール
問:シビックチケット03-5803-1111 
https://www.b-academy.jp/hall/
※セット券は3/31(火)までの期間限定販売