神戸市室内管&混声合唱団が2026シーズン・プログラムを発表

左:佐藤正浩(神戸市混声合唱団音楽監督) 
右:鈴木秀美(神戸市室内管弦楽団音楽監督)

 1月16日、神戸市室内管弦楽団、神戸市混声合唱団の2026シーズン・プログラム(26年4月~27年3月)発表記者会見が行われ、それぞれの音楽監督を務める鈴木秀美佐藤正浩が出席した。

 就任6季目を迎える鈴木は、全5回の定期演奏会のうち3回を指揮する。
 5月のシーズン開幕公演はウィーンとイタリアをテーマに、ロッシーニ《アルジェのイタリア女》序曲、ニーノ・ロータのチェロ協奏曲第2番、シューベルト交響曲第6番などを取り上げる。協奏曲の独奏には、「古楽器を貸し借りする間柄」だというウィーン・フィル首席チェロ奏者のタマーシュ・ヴァルガを迎える。
 11月は、ハイドンの交響曲第31番「ホルン信号」、バルトークのヴァイオリン協奏曲第1番(独奏:石上真由子)、そしてドヴォルザークの交響曲第8番。選曲意図について鈴木は「ハイドンとバルトークは仕事をしていた地域が同じという繋がりからプログラムを考えました。ドヴォルザークの音楽にもハイドンとのつながりを感じます」と語った。
 2027年2月には没後200年のベートーヴェンを特集。ピアノ協奏曲第4番(独奏:小山実稚恵)、交響曲第4番、第5番「運命」を組み合わせる。
 「これらはほぼ同じ時期の作品で、協奏曲にも『運命』のモチーフが現れる。音楽的にも充実してきた頃の作品です。2027年は交響曲全曲演奏も視野に入れています」と、さらに先を見据えた構想の一端を明かした。

 客演指揮者も個性が際立つ。イギリス室内管の首席客演指揮者ロベルト・フォレス・べセスは、現代スペインを代表する巨匠ピアニスト ホアキン・アチュカロとともに登場。昭和初期に欧米でもその名を知られた神戸市出身の大澤壽人がパリ留学時代に書いた「小ミサ曲」の作曲者自身によるオーケストラ版(世界初演)をはじめ、アチュカロの十八番、生誕150年のファリャ「スペインの庭の夜」などが演奏される。
 また、ドルトムント市立劇場の音楽総監督代理兼第一カペルマイスターを10年以上務める小林資典は、ストラヴィンスキー「プルチネルラ」と、近年再評価が進み今年が生誕150年にあたるヴォルフ=フェラーリのコミック・オペラ《スザンナの秘密》(セミ・ステージ形式)を指揮。劇場経験に裏打ちされたタクトに期待したい。

 弾き振りによる音楽の探求をテーマとする「Selection」シリーズは2公演。9月は世界の第一線で活躍するヴァイオリニスト佐藤俊介が2023年に続いての登場。ヴィヴァルディ「四季」などで今回も鮮烈な印象を残してくれるはずだ。
 一方、27年2月には、近年ピアニストの枠を超えた活動で注目を集める阪田知樹が初登場。室内管の若きコンマス森岡聡とともに、没後180年のメンデルスゾーン「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲」、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を取り上げる。

 鈴木と同じく、2021年から合唱団の音楽監督を務める佐藤。毎年恒例の室内管との合同定期では、ベルリオーズの劇的物語「ファウストの劫罰」(演奏会形式)を上演する。
 「オペラ、オラトリオ、カンタータの要素を併せ持つ作品。その特異性に惹かれました」と佐藤。冒頭の歌詞「自然よ、お前はなんて美しい」には「裏をかえすと、人間の世界の汚さに絶望しているということ。知恵やお金があれば何でも手に入れられると錯覚しがちだが、それだけでは最後に地獄に落ちる。権力だけですべてを手に入れることはできない」と、現代社会にも通じるメッセージを見出しているという。
 キャストは、タイトルロールの宮里直樹(テノール)をはじめ、黒田祐貴(バリトン)、浜田理恵(ソプラノ)、そして団員オーディションで選ばれた松森治(バス)という布陣。若きエネルギーをどのように束ねるのか、佐藤の手腕が注目される。

 合唱団の定期演奏会は秋と春の2回。秋は、今勢いに乗る古楽アンサンブル「アントネッロ」とその主宰、濱田芳通を迎える。佐藤は「いろいろな様式、時代に対応できる合唱団にしたい」とこの共演に合唱団の成長を見据える。バルセロナ郊外の修道院に伝わる中世の巡礼歌を集めた「モンセラートの朱い本」などで、刺激的なコラボレーションが繰り広げられるだろう。
 春は打って変わってアメリカがテーマ。この演奏会のために新進作曲家・森田花央里に委嘱した「ガーシュウィン・ソングブック」(世界初演)のほか、ナチスが台頭した社会を痛烈に批判したヴァイルの歌劇《マハゴニー市の興亡》、バーンスタイン「ウエスト・サイド・ストーリー」の抜粋などを予定。
 さらに佐藤は、2026年度のNHK全国学校音楽コンクール、全日本合唱コンクールの課題曲を歌うコンサートも指揮する。YouTubeでも高い評価を得ており、今回は昨年の全日本合唱コンクール全国大会で銅賞に入賞した神戸大学附属中等教育学校とのコラボレーションステージも予定されている。

 会見の最後には、両楽団を運営する神戸市民文化振興財団により4年に一度行われる世界的な登竜門、神戸国際フルートコンクールの2025年大会で第1位を獲得した2名による記念リサイタルの開催が発表された。今年10月には、2007年ドイツ生まれのファビアン・ヨハネス・エッガーが来日。神戸、東京でのリサイタルの他、群馬交響楽団の定期演奏会にも登場する。
 もう一人、すでにベルン交響楽団首席としても活躍するリカルド・チェラッキは27年6月頃の来日を予定している。

文:編集部
写真提供:神戸市民文化振興財団

神戸市民文化振興財団
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