2025年度で東響音楽監督を退任したジョナサン・ノット。演奏機会の多い作品ほど斬新な表現を追求して、刺激を与え続けてきた。退任前シーズンの「第九」もノットらしさ満載で、テンポもダイナミクスも落ち着くことなく、常に前進し、変化し続ける。第4楽章はもはや何かに憑かれたかのように追い込み続ける(追い立てやすい二重フーガやプレスティッシモは逆に落ち着くが)。すべてが成功しているとは言わずとも、一丸の演奏が興奮を誘うのも間違いない。リスクを取り続けるアプローチは、ノット&東響の成果の象徴であり、ベートーヴェンの真髄に迫るものでもある。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年2月号より)
【information】
SACD『ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」/ジョナサン・ノット&東響』
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団
安川みく(ソプラノ) 杉山由紀(メゾソプラノ) 宮里直樹(テノール)
甲斐栄次郎(バリトン)
東響コーラス
収録:2024年12月、サントリーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00899 ¥3850(税込)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。


