秘められた心の叫びを聞く
深く、ときに激しくもあるハ短調の響きが聴き手の心を揺さぶる、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番。抑圧からの解放か、独裁者への恨み節なのか、それとも…と、聴くたびに作曲者の真意を考えてしまうショスタコーヴィチの交響曲第10番。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の10月定期演奏会は、聴き手の心に衝撃を与える一夜となる。
伊藤恵がソリストとして登場するピアノ協奏曲第24番は、華麗でピアニスティックな面ばかりではないモーツァルトの深淵を味わえる秀作。悲哀や不安感が音楽となってホールに満ちあふれ、ほんの少しの希望が見え隠れしながらもドラマティックな物語を提示してくれるような作品だ。モーツァルトだからといって幸せだったり癒やされたりばかりじゃない…と、本人が教えてくれるような音楽を、シューマンなど陰のある音楽も得意とする伊藤がどのように深掘りし、演奏してくれるのかが楽しみだ。
ショスタコーヴィチが1953年に発表した交響曲第10番は、全4楽章で約50分を要する力作。国の権力者だったヨシフ・スターリンの死後、その“ご機嫌”に翻弄され続けてきたショスタコーヴィチが自らの叫びを上げたとも言われる問題作だが、高関健はこの作品へどういった方向から取り組むのかが気になる。何度もこの曲は聴いたという方には新しい視点を、初めて聴くという方には衝撃的なほどの存在感を与えてくれるだろう。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)
第292回 定期演奏会
10/3(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィルチケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp