日本屈指の実力派たちによる一夜限りのシューベルト「ます」が室内楽フェスティバル「AGIO」で実現!

左:宮田大
右:横溝耕一

 「室内楽をもっと身近に。」と掲げて、チェロ奏者の宮田大とヴィオラ/ヴァイオリン奏者の横溝耕一が発起人となって開催される「室内楽フェスティバル AGIO」が、今秋で3年目を迎える。 豪華なアーティストたちが参加して、多彩な編成の楽曲を聴ける「室内楽の祭典」は年々注目を増している。

 11月23日夜の浜離宮朝日ホールでの公演は「シューベルトのピアノ五重奏」。「何の曲だろう?」と思う人もいるかもしれないが、「ます」といわれればすぐ納得できるはず。ヴァイオリンが1人、コントラバスが入るという少し特殊な編成のため、「ピアノ五重奏曲」というより「ます」という方がはるかに通りがいい。そのズレを突いた公演タイトルは面白いし、人気作に改めて正面から取り組もうという覚悟も示しているに違いない。新たな光を当てる清新な「ます」への期待が高まる。

左より:荒井里桜 ©AMUSE_Photo Takahiro Sakai/幣隆太朗 ©早見仁志/阪田知樹

 その意欲にふさわしいメンバーが集うことも心強い。荒井里桜(ヴァイオリン)、横溝耕一(ヴィオラ)、宮田大(チェロ)、幣隆太朗(コントラバス)、阪田知樹(ピアノ)。いずれも最前線で活躍する、若手と中堅の人気奏者がそろう。5人全員が注目だが、本作の要所となるコントラバスを幣隆太朗が弾くことは重要ポイントとなる。ドイツSWR響に所属し、日本でも演奏機会の増えている幣は、支え役に加えて、音楽全体を前に進めるエンジン役など、コントラバスの重要性を体現している名人だ。

 その幣と宮田によるロッシーニ「チェロとコントラバスのための二重奏曲」が聴けるのも嬉しい。低音デュオ曲の代表的名品で、技巧と歌心あふれる楽曲だが、これほどの名手たちで聴けるのは貴重。低音の魅力を堪能したい。そして、ハイドンのピアノ三重奏曲「ジプシー風」は端整な古典の美にあふれる一曲で、終楽章のロマ風の快速の音楽は興奮を誘うはず。荒井、宮田、阪田の3人が、本作の魅力を味わい深く楽しませてくれるだろう。

文:林昌英

宮田大&横溝耕一が贈る室内楽フェスティバル AGIO vol.3
シューベルトのピアノ五重奏

2025.11/23(日・祝)18:30 浜離宮朝日ホール
問:Bunkamura 03-3477-3244
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/
https://www.bunkamura.co.jp


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。