東京フィルハーモニー交響楽団 2026/27シーズン ラインナップを発表

 東京フィルハーモニー交響楽団が、2026/27シーズン(2026年1月〜27年2月)の定期演奏会ラインナップを発表した。全10回の定期公演は、同楽団の顔である名誉音楽監督チョン・ミョンフン、首席指揮者アンドレア・バッティストーニ、そして特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフの3人のマエストロを軸に名匠と新鋭が登場し、アニバーサリーの作曲家を中心とした名作プログラムが並ぶ。

上段左より:チョン・ミョンフン、アンドレア・バッティストーニ、ミハイル・プレトニョフ 以上3点©Takafumi Ueno
下段左より:小林研一郎 ©K. Miura、ピンカス・ズーカーマン ©Takafumi Ueno、ソフィー・デルヴォー ©Co Merz

 2020年よりシーズンの区切りを1月から12月としていた同楽団だが、26年1月から6月末まで(予定)の東京オペラシティ コンサートホールの改修・休館などにより、26年1月から27年2月にかけてオーチャード定期8回、サントリー定期8回、東京オペラシティ定期6回と、3会場で行われる定期の公演数が変更となる。

 開幕を飾るのは首席指揮者アンドレア・バッティストーニ。2015年4月より現在のポストに就き、来シーズンが10年の節目となる。1月と5月の2度登場するが、どちらのプログラムにも、同楽団と継続的に取り組んでいるマーラーの交響曲を配した。1月はポスト就任前の2014年1月に指揮し、ライブ収録のCDが発売されている「第1番」。そして5月は「第4番」、マーラーの命日5月18日の前日に演奏されるのも意義深い。
 各月のプログラム前半は、1月定期が没後90年となるレスピーギの「ピアノと管弦楽のためのトッカータ」で、ジュネーヴ国際音楽コンクール入賞後、活躍目覚ましい五十嵐薫子をソリストに迎える。5月定期はバッティストーニ自身が編曲したシューマン「子供の情景」が世界初演される。

五十嵐薫子 ©Seiji Okumiya

 続いて登場するのが名誉音楽監督のチョン・ミョンフン。来シーズンは4つの定期に登壇し、オペラから交響曲まで幅広いプログラムを指揮する。
 2月は没後200年となるウェーバーの《魔弾の射手》序曲、俊英・岡本誠司を迎えてのブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」と19世紀ドイツ・プログラム。
 7月は、同楽団と継続的に取り組んでいる演奏会形式のオペラ上演。今回はコロナ直前の2020年2月に名演をのこしたビゼー《カルメン》に再度取り組む。歌手は調整中だが、2027年のミラノ・スカラ座音楽監督就任を控えたいまのマエストロで聴くオペラ、いやが上にも期待は高まる。
 続く10月は、マキシム・ヴェンゲーロフを迎えてのシベリウスのヴァイオリン協奏曲が聴きもの。まもなく行われるヨーロッパ・ツアーでのコンビが1年後に日本で再現される。27年2月には、サン=サーンスのオルガン付きほかが披露され、シーズンの締めくくりを華やかに飾る。

岡本誠司 ©Yuji Ueno
マキシム・ヴェンゲーロフ ⒸDavide Cerati

 特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフは11月の1回のみの登場。自作「14の音楽的記憶」(2024)と、得意とするチャイコフスキーより交響曲第4番で、自身の作曲家としての側面とロシア音楽の伝統を響かせる。独自の視点と感性で、聴衆を新たな音楽体験へと誘うだろう。

 その他客演陣には、世界的巨匠や話題のマエストロが登場、シーズンを盛り上げる。
 今シーズンに続いて登場するのは、世界的なヴァイオリニストで指揮者のピンカス・ズーカーマン。26年6月には、《フィガロの結婚》序曲、ヴァイオリン協奏曲第3番、交響曲第40番と、自身が得意とするオール・モーツァルト・プログラムで、弾き振りを披露する。

ピンカス・ズーカーマン ©Takafumi Ueno
小林研一郎 ©K. Miura

 8月には炎のマエストロ、小林研一郎が十八番のリムスキー=コルサコフ「シェエラザード」を取り上げる。注目はヴァイオリニスト・若尾圭良の登場。2006年ボストン生まれ、昨年9月に音楽監督アンドリス・ネルソンス指揮のボストン響とシーズン幕開けを飾るオープニングガラコンサートに出演するなど、いま世界が注目する新星だ。東京フィルとは2024年にショーソン「詩曲」とラヴェル「ツィガーヌ」で共演しており、満を持しての定期登場となる。

若尾圭良
ソフィー・デルヴォー ©Co Merz

 そして、ウィーン・フィルおよびウィーン国立歌劇場管の首席ファゴット奏者を務めるソフィー・デルヴォーがタクトをとる27年1月定期も期待だ。近年指揮者として日本のオーケストラとも共演を重ねている彼女だが、東京フィルとは没後200年のウェーバーの協奏曲を吹き振りするほか、モーツァルト《魔笛》序曲、ブラームスの交響曲第1番と、ドイツ音楽の系譜をたどるプログラムを披露する。

 創立115年のシーズンは名曲とともに、名匠と気鋭の妙技にひたる1年となりそうだ。

文:編集部

東京フィルハーモニー交響楽団
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