【CD】おやすみまえのお話/須田美穂

 須田美穂は桐朋学園大学を経てデトモルト音楽大学を首席で卒業したピアニスト。想像し感じたものを音で描き出すことを大切にした音楽づくりで聴衆を魅了しており、本盤はそんな彼女のピアニズムが見事に結実したものとなっている。シューマンの「子供の情景」ではやわらかく繊細な音色を活かし、物語を紡ぐようにあたたかい演奏を展開。モーツァルトやシャブリエでも清潔感のある丁寧な表現を聴かせてくれているが、ウクライナの作曲家サムイル・マイカパルによる子どものための作品ではさらに彼女の音色の魅力が発揮され、幼い頃の幸せな記憶を呼び覚ましてくれるかのようだ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年9月号より)

【information】
CD『おやすみまえのお話/須田美穂』

シューマン:子供の情景/モーツァルト:ピアノ・ソナタ K.280/シャブリエ:「絵画的小品集」より第10曲〈スケルツォ=ワルツ〉/マイカパル:子どもの歌、お話、ちょうちょう、つかの間の幻、春、不安なとき、小さなお話、子守歌、おやすみまえのお話、伝説、マリオネットの行進、イタリアのセレナード

須田美穂(ピアノ)

コジマ録音
ALM-7317 ¥2970(税込)


長井進之介 Shinnosuke Nagai

国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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