ヘフリガー芸術総監督が語る、アバド指揮ルツェルン祝祭管の魅力

  今年80歳になる巨匠クラウディオ・アバド率いるドリームオーケストラ、ルツェルン祝祭管弦楽団が「ルツェルン・フェスティバル in 東京2006」から7年ぶりに来日する。これに先立ち、26日東京で、ルツェルン・フェスティバルのミヒャエル・ヘフリガー芸術総監督を囲む記者懇談会が行われた。

 
 ルツェルン祝祭管弦楽団は、アバドによって新たに創設されたオーケストラで、毎夏、アバドを慕って世界的なソリストたちが集う、ウィーン・フィルやベルリン・フィルに匹敵するドリーム・オーケストラだ。
 
「アバドは好きな音楽を好きな音楽家たちと演奏するという立場を貫いています。じつは、往年の名指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンも自分のドリームチームのようなオーケストラをもつことを夢見ていました。しかし、それは実現しませんでした。アバドは、そうしたドリームオーケストラを実現した、初めての指揮者なのです。彼のもとに集まる音楽家たちは、それぞれ世界の名門オーケストラで主要なポジションにいます。それでも、アバドから招集の声がかかれば、即座に飛んできます。彼らは、自分たちが今日音楽家として活躍できているのはアバドの存在があったからこそと思っています。アバドとともに音楽を作り上げるのは、何物にも代え難いものなのです。今回創設当初とは大幅にメンバーが替わり若返っていますが、それでも、ひとりひとりのメンバーはすべて、アバドによって選ばれています。そのため、演奏の質は高い次元を保っています。そして、音楽的な精神も、かわりないのです」
 
 今回の日本公演では、8月にルツェルンでも演奏するベートーヴェンの 交響曲第3番 「英雄」、シューベルトの 交響曲第7(8)番「未完成」、ブルックナーの交響曲第9番のほか、ラドゥ・ルプーとのベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番が予定されている。昨年、11年ぶりのリサイタル・ツアーで大反響を巻き起こしたルプーとの共演は、なかでも大きな話題だ。
 
「アバドとルプーはまれに見る特別な関係です。たびたびルツェルンでも共演し、そのすばらしさを目のあたりにしてきました。二人のスケジュールを合わせられたのも奇跡かもしれない。日本で二人の共演が実現できることを、ほんとうにうれしく思っています。ぜひこの2人の共演を聴いてほしいです」
 
 長年アバドの音楽作りをつぶさに見てきたヘフリガー氏には、アバドはどのように映るのだろうか。
 
「10年ほど前に病気をされて以降のアバドの音楽作りは、より深淵になっていると思います。創造性という意味で、終わりがない。前に前にと進む力は、病気をする前よりもエネルギッシュになっていると感じるほどです。自然に聴衆と語り合うような音楽の伝え方、飾り気のない、そのままの本物の演奏をする音楽家、音楽に対する献身ぶりにはすさまじいものがあります。次から次にあたらしいアイデアも出てくる。それは実現が難しいとてつもない夢だったりしますが、夢見ることをやめない。そして、ひとたびステージにあがると、あたかも禅の修行僧のように音楽に集中し、オーケストラのメンバーとその集中力を共有し、音楽とともに呼吸をする。そこには音楽しか存在しないのです」
(c)Monika Rittershaus
 
■ルツェルン祝祭管弦楽団 日本公演
10月20日(日)18:00 サントリーホール
10月21日(月)19:00 サントリーホール
◆料金
S¥45,000 A¥39,000 B¥33,000 C¥28,000 D¥21,000
◆曲目
ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」op.84 序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37(ピアノ: ラドゥ・ルプー)
ベートーヴェン: 交響曲第3番 変ホ長調 op.55 「英雄」
 
10月15日(火)19:00 サントリーホール
10月17日(木)19:00 サントリーホール
◆料金
S¥42,000 A¥36,000 B¥30,000 C¥25,000 D¥18,000
◆曲目
シューベルト: 交響曲第7(8)番 ロ短調 D759 「未完成」
ブルックナー: 交響曲第9番 ニ短調
 
 
 
【関連公演】
■ラドゥ・ルプー ピアノ・リサイタル
10月12日(土)18:00 鎌倉芸術館 大ホール
◆料金
S席 9,000円 A席 7,000円 B席 5,000円
10月14日(月・祝)19:00 いずみホール
◆料金
¥10,000(全席指定)
10月17日(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
◆料金
S¥12,000 A¥9,000 B¥6,000 C¥4,000
 
◆曲目
シューマン:子供の情景 op.15
シューマン:色とりどりの小品 op.99
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D.959(遺作)