木越洋はN響のチェロ首席を33年間務め、オケの顔でもあった。今回のアルバムは、チェロ以外の楽器が原曲の作品を集めたもの。ベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」はヴァイオリンの曲だが、チェロで出来るとは思わなかった。木越自身による編曲は、予想を遥かに上回る。まず細かい音が滑らかに演奏されるのに驚かされる。新たなチェロ・ソナタとして通用しそう。またチェロが低い分、ピアノの高音が一層煌めき、鈴木慎崇の走句の美しさが際立つ。ラヴェル「マ・メール・ロワ」のチェロ版も味がある。〈パゴダの女王〉中間部は低音の対話が独特。ドビュッシー「シランクス」の和風味付けも面白い。
文:横原千史
(ぶらあぼ2025年4月号より)
【information】
SACD『ベートーヴェン:ソナタ第5番「春」 他/木越洋&鈴木慎崇』
ベートーヴェン(木越洋編):ソナタ第5番「春」/ラヴェル(M.フィッシュ編):マ・メール・ロワ/ドビュッシー(木越編):シランクス(パンの笛)
木越洋(チェロ)
鈴木慎崇(ピアノ)
マイスター・ミュージック
MM-4539 ¥3520(税込)



