大谷康子と福間洸太朗が漱石ゆかりの地で奏でる洋楽黎明期の秀作たち

左:大谷康子 ©Masashige Ogata
右:福間洸太朗 ©Shuga Chiba

 2014年にスタートした文京シビックホールの「夜クラシック」は、テーマ曲であるドビュッシー「月の光」を含む特別なプログラムとアーティストのトークで癒しのひとときを贈る人気シリーズ。10周年にあたる2024-25シーズンは、滅多に聴けない編成や工夫を凝らした選曲で更なる特別感を醸し出している。1月は、2025年にデビュー50周年を迎えるヴァイオリニストの大谷康子が「夜クラ」初登場。共演は現在ドイツと日本を拠点に独自の活動を展開しているピアニスト福間洸太朗。ベテラン・ヴァイオリニストと気鋭のスターピアニストという、ありそうでなかった組み合わせは何かが起こりそうな予感を抱かせる。

 そして「“夏目漱石と月”に寄せて」というコンサートのテーマがまた興味深い。漱石は、英国留学から帰国後に文京区駒込千駄木町(現・向丘)に住んでいた文京区ゆかりの文豪。そして「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したという都市伝説が残されている。そんな漱石の時代、すなわち日本における西洋音楽黎明期の作品から、山田耕筰の「『荒城の月』を主題とする変奏曲」、最初期の女性演奏家・作曲家として知られる幸田延のヴァイオリン・ソナタ第1番より第1楽章、夭折の天才といわれる貴志康一の「竹取物語」の3作をチョイス。もちろんエルガー「愛の挨拶」やベートーヴェン「月光ソナタ」、フランクのヴァイオリン・ソナタといったクラシックの名曲もラインナップされている。ふたりの名手による魅力的な演奏会になりそうだ。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2025年1月号より)

夜クラシック Vol.36 大谷康子(ヴァイオリン) 福間洸太朗(ピアノ)
2025.3/28(金)19:00 文京シビックホール
問:シビックチケット03-5803-1111
https://www.b-academy.jp/hall/