ケルンを拠点とするソプラノ松島理紗が現代ドイツ音楽シーンを声でたどる

 東京オペラシティの「B→C」シリーズ、1月はドイツ・ケルンを拠点に活躍するソプラノの松島理紗が、刺激的かつ挑戦的なプログラムで登場する。高校から大学院まで桐朋学園で学び、ウィーン市立音楽芸術大学大学院を修了後、現在はケルン音楽舞踏大学大学院現代音楽科で研鑽を積む。今回のプログラム、松島は全体のコンセプトを「静けさに耳を傾ける。耳を開く。音の素材、その美しさを楽しむ」とする。2つのバッハ作品(「コーヒー・カンタータ」「ヨハネ受難曲」からのアリア)以外は、すべて1950年代以降に書かれたもの。特殊唱法は封印し、伝統的な発声法で勝負というのが彼女のこだわりだ。

 前半は、同時代のライマン(1936〜2024)、ピンチャー(1971〜)、ムンドリー(1963〜)の声や言葉の響きを探求する作品が並ぶ。そこにフランクフルトを拠点に活動するピアニスト・作曲家の小倉美春への委嘱新作が加わり、現代ドイツの声楽作品の諸相が示される。

 後半は、戦後のオペラを代表するヘンツェ「若い恋人達へのエレジー」(1959〜61/87)やB.A.ツィンマーマン「兵士たち」(1958〜60/63〜64)のほか、イタリアの巨匠ノーノ「イントレランツァ(不寛容)1960」(1961)、グラインドボーン音楽祭やメトロポリタン歌劇場の上演で注目のブレット・ディーン「ハムレット」(2013〜16)を取り上げるのが非常にレア。松島の鋭い感性と豊かな音楽性が発揮される話題性十分のコンサートだ。パワフルでドラマティックな歌唱に期待したい。ピアノは青木ゆり。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2025年1月号より)

東京オペラシティ B→C 松島理紗(ソプラノ)
2025.1/21(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp