読売日本交響楽団 2025/2026シーズンの聴きどころ

 読響のラインナップは、来シーズンも豪華の一言だ。名曲から秘曲までバラエティに富んだ組み合わせで、指揮者もビッグネームから若手の有望株まで個性豊かな面々が並ぶ。眺めているだけで楽しくなるラインナップとなった。

セバスティアン・ヴァイグレ ©読響

 まずは、常任指揮者の任期を2028年3月まで延長したセバスティアン・ヴァイグレ。来シーズンでも多彩なプログラムを披露する。6月のドヴォルザークの交響曲第7番を中心としたチェコ・プロ(6/22, 6/24)。そして、10月のショスタコーヴィチの交響曲第15番をメインにしたロシア・プロ(10/21)、モソロフの「鉄工場」とチャイコフスキーの「悲愴」交響曲を組み合わせる(10/12, 10/14)のもユニークだ。また、プロコフィエフとリヒャルト・シュトラウスによる公演(6/16, 6/18)は、マエストロと読響の到達点をうかがえる演奏になるだろう。

 ヴァイグレといえば、ドイツ後期ロマン派の大曲を毎シーズンのように取り上げる。来季は、アイヒェンドルフの詩をもとに、ドイツの芸術や自然を讃えたプフィッツナーのカンタータ「ドイツ精神について」(26.1/20)。マーラーの交響曲第8番のマニアック&激渋バージョンともいえる大作の日本初演だ。

左より:ユライ・ヴァルチュハ ©読響/シルヴァン・カンブルラン

 今シーズンより首席客演指揮者に就いたユライ・ヴァルチュハは、マーラーの「大地の歌」を指揮する(25.8/19)。オーケストラをすみずみまで鳴らし、細やかに響きを作り出す手腕に期待したい。

 桂冠指揮者のシルヴァン・カンブルランは、彼ならではの2つのプログラムを指揮する。メンデルスゾーンの序曲、細川俊夫の「月夜の蓮」(独奏:北村朋幹)に続き、ツェンダーの「シューマン・ファンタジー」(日本初演)(7/8)。ロマン派、古典派を現代作曲の視点から捉えたというコンセプトがいい。ムソルグスキーの「展覧会の絵」(ラヴェル編)を中心とした演奏会(7/13, 7/15)では、その色彩美が発揮される曲がずらり。

左より:鈴木優人 ©読響/尾高忠明 ©読響/山田和樹 ©読響

 読響と相性のいい指揮者も、それぞれ興味深いプログラムで登場する。

 指揮者/クリエイティヴ・パートナーの鈴木優人は、ストラヴィンスキーの「春の祭典」(26.3/14, 3/15)と、メンデルスゾーン版バッハの「マタイ受難曲」(3/5)を指揮する。彼の得意なレパートリーで、春を迎える3月というシーズンにふさわしい選曲がうれしい。

 名誉客演指揮者の尾高忠明は、ブルックナーの交響曲第9番を手堅く聴かせてくれるはず(25.5/27)。山田和樹は、團伊玖磨の歌劇《夕鶴》を演奏会形式で(11/23)。日本人作曲家の作品を果敢に取り上げるヤマカズが、名作オペラにどの方向から光をあてるのか。

左より:マリオ・ヴェンツァーゴ ©読響/オクサーナ・リーニフ ©Oleh Pavliuchenkov/ケント・ナガノ ©Benjamin Ealovega

 そして、名匠マリオ・ヴェンツァーゴの再登場。前回(2023年)の共演では、ブルックナーの交響曲第4番の個性ほとばしった解釈が大きな評判を呼んだ。今回も同じ作曲家の交響曲第7番(26.2/4)。望月京によるヴァイオリンと管弦楽のための新作(世界初演 独奏:諏訪内晶子)と組み合わされるのも楽しみだ。

 来シーズンは、初共演となる指揮者にも要注目だ。

 2021年に女性として初めてバイロイト音楽祭の指揮台に立ったオクサーナ・リーニフ。ブラームスのピアノ協奏曲第1番(独奏:ルーカス・ゲニューシャス)とベートーヴェンの交響曲第5番というプログラム(25.4/16)は、オペラ指揮者として評判の才人に、ドイツのシンフォニックな作品を振ってもらうという趣向が心憎い。バルトークの「中国の不思議な役人」を中心とした公演(4/21)にも期待だ。

 最大のサプライズは、ケント・ナガノの登場だろう。マーラーの交響曲第7番(9/25)、そしてシューベルトの「グレイト」交響曲(9/21)と、大曲をガッツリ披露してくれる喜び。読響がどんな音を出してくれるのか、待ち遠しい限りだ。

左より:ハンヌ・リントゥ ©Veikko Kähkönen/エドワード・ガードナー ©Benjamin Ealovega/マキシム・パスカル ©読響

 ともに実力派のハンヌ・リントゥとエドワード・ガードナーも読響初登場。リントゥのシベリウスやサーリアホのプロ(11/27)、ガードナーのブラームスの交響曲第1番(10/25, 10/26)も聴き逃せない。

 年末のベートーヴェン「第九」公演には、フランスの異才マキシム・パスカルが指揮台に立つ。こうした意外性も読響の魅力の一つといっていいだろう。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年1月号より)

問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp
※各公演のプログラムや発売日等の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。