バイエルン放送交響楽団の日本公演を指揮する同楽団の首席指揮者サイモン・ラトルが、11月25日、都内で行われた記者懇親会に出席した。登壇者はラトル、事務局長のニコラス・ポントの2名。バーミンガム市響、ベルリン・フィル、ロンドン響と、世界のトップオーケストラを率いてきた名匠ラトル。2023年に現在のポストに就任し、今回が初めての日本公演。すでに終えている西宮(11/23)、川崎(11/24)に加え、東京(11/26, 11/27, 11/28)、名古屋(11/29)でも公演を行う。
オイゲン・ヨッフムによって創設され、ラファエル・クーベリック、コリン・デイヴィス、ロリン・マゼール、マリス・ヤンソンスら往年の巨匠たちが首席指揮者を務めてきたバイエルン放送響。会見冒頭、ラトルはあらためて、このオーケストラのシェフに就いた喜びを語った。
「初めて生で聴いたのは、クーベリックが指揮したリヴァプールでのコンサートでした。それから録音でも聴くようになり、私の音楽人生の側にはずっとバイエルン放送響がありました。それが今、首席指揮者としてこのオーケストラを指揮できることは大変光栄です。
バイエルン放送響は現代音楽の分野にも非常に積極的に取り組む一方、ピリオド楽器を演奏に取り入れたいという私のアイディアにも答えてくれるなど、大編成のオーケストラとしては珍しく幅広いジャンルの作品を取り上げています。こんな好奇心旺盛なオーケストラを好きにならないわけがありません」
事務局長のニコラス・ポントは、来日が叶わなかった6年間を振り返りつつ、ラトル就任時の楽団員の様子を明かした。
「2019年に前首席指揮者のヤンソンスが亡くなり、20年からはパンデミックによって、それまで1年おきに行っていた日本ツアーもできなくなりました。日本に来られなかった6年間はつらい時間でした。
そんな中、サイモンの首席指揮者就任は楽団員にとっても大きな喜びで、彼との最初のシーズンは期待していた以上の活動ができたと思っています。まさに新しい時代の夜明けのようでした。そういったこともあり今回の日本公演には特別な思い入れがあります」
日本ツアーは西宮を皮切りに、懇親会の前日(11/24)はミューザ川崎シンフォニーホールでも公演が行われた。ミューザの音響を高く評価していることでも知られるラトルは、この日の演奏を経てあらためてそのすばらしさを実感したという。
「楽団員たち一人ひとりが自分の音を聴きとることができるので、それぞれが密にコミュニケーションをとることができます。どんな演奏をしても、ホールがそれを支えてくれる安心感があります」
川崎で披露したプログラムのメインは、今年生誕200年のブルックナー作曲の交響曲第9番。27日のサントリーホールでも演奏される。
「ブルックナーの作品はロマン派の音色ではありますが、リズム・形式は古典そのもの。交響曲第9番には作曲家自身が自らの人生を振りかえっているような過去の作品からの引用があり、第7番や『テ・デウム』の旋律が聞こえてきます。第3楽章、これほど情熱的で野蛮で、不協和音に満ちたアダージョは他にありません。ブルックナーの話をするとどうしても感情的になってしまいます」
日本公演ではブルックナーの他、12月に発売予定の新譜にも収録されたマーラー「夜の歌」、ベルリン・フィルのアーティスト・イン・レジデンス就任でこれまで以上に期待を集めるチョ・ソンジン(ピアノ)との共演など、見どころ満載。
新たなリーダーを得たバイエルン放送響が6年の軌跡を刻む日本公演。注目したい。
取材・文・写真:編集部
富士電機スーパーコンサート
サー・サイモン・ラトル指揮 バイエルン放送交響楽団
2024.11/26(火)、11/27(水)各日19:00 サントリーホール ※完売
出演/チョ・ソンジン(ピアノ)★
曲目/
【11/26】ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.83★、交響曲第2番 ニ長調 op.73
【11/27】リゲティ:アトモスフェール
ワーグナー:歌劇《ローエングリン》より〈第1幕への前奏曲〉
楽劇《トリスタンとイゾルデ》より〈前奏曲〉〈愛の死〉
ウェーベルン:6つの作品 op.6/ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp
他公演
11/28(木) NHKホール (NHK音楽祭2024)(NHKプロモーション 音楽祭係03-3468-7736)
11/29(金) 愛知県芸術劇場 コンサートホール(中京テレビクリエイション052-588-4477)
※公演によりプログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。