【SACD】ハイドン:交響曲集 Vol.25/飯森範親&日本センチュリー響

 20世紀後半に全曲録音が成立して久しいが、ハイドンの交響曲の全曲演奏は未だ大プロジェクトである。順調に進む飯森の「ハイドンマラソン」からの最新盤には、創作の傾向が異なる3つの時代の作品が収められている。とりわけ印象的なのは「シュトゥルム・ウント・ドラング」時代の短調の作品で、強い表出力を持つ第44番であるが、注目すべきは飯森の安定したアプローチである。21世紀に始まった全集らしく、モダン・オーケストラを用いながらもHIP(歴史的情報に基づいた演奏)を意識した演奏は、ハイドンの交響曲の持つ古典性のみならず、ユーモアや実験性をも敏感に描き出している。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2024年12月号より)

【information】
SACD『ハイドン:交響曲集 Vol.25/飯森範親&日本センチュリー響』

ハイドン:交響曲第57番、同第44番「悲しみ」、同第72番

飯森範親(指揮)
日本センチュリー交響楽団

収録:2020年10月&2022年9月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00863 ¥3850(税込)