名古屋フィル 川瀬賢太郎音楽監督による25.4-26.3シーズン ラインナップ発表会見

左より:犬塚力(名古屋フィル理事長)、川瀬賢太郎、山本友重

写真提供:名古屋フィルハーモニー交響楽団

 10月10日、名古屋フィルハーモニー交響楽団が2025.4-2026.3シーズン ラインナップを発表。同日会見が行われ、音楽監督の川瀬賢太郎、特別客演コンサートマスターの山本友重らが登壇した。

 来シーズンの定期演奏会では、「肖像」をテーマにした11のプログラムが用意された。各回2公演ずつ、全22公演が愛知県芸術劇場 コンサートホールで開催される。

 音楽監督として3季目を迎える川瀬は、3プログラムを指揮。シーズンオープニングとなる25年4月の第533回定期「ぼくの肖像」では、ジャンルを超えた才能を発揮する角野隼斗を迎え、前半にグルダの「コンチェルト・フォー・マイセルフ」(ドラム:石若駿、エレキベース:マーティ・ホロベック)を取り上げる。ジャズテイスト満載のピアノ協奏曲だけに、即興を得意とする角野による驚きに満ちたステージになりそうだ。
「通常のクラシックの作品ではまず含まれない楽器も並ぶ、ユニークな曲です。1楽章には“Old is New”(古いは新しい)というタイトルがついていますが、この作品と過去の作曲家(後半のサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付』)を並べることで、それぞれの新たな魅力を引き出すことができればと考えました」(川瀬)

 「死にゆく者の肖像」と題された9月の第537回では、ラフマニノフの交響詩「死の島」、同楽団のコンポーザー・イン・レジデンスである小出稚子による能声楽(青木涼子)を起用した委嘱新作、そしてメインにはチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が据えられた。川瀬によれば、プロのオーケストラで「悲愴」を指揮するのはこれが初めてだという。
「この曲が含まれたプログラムはすべてお断りしていたほど、自分の中で避けてきた作品なのですが、『長年お世話になってきた名古屋フィルだからこそ』という気持ちにも後押しされ、チャレンジすることにしました」

 26年2月の第542回「家族の肖像」では、武満徹「系図—若い人たちのための音楽詩—」(語り:五藤希愛、アコーディオン:大田智美)が取り上げられる他、R.シュトラウス「英雄の生涯」では、今季よりコンサートマスターに就任した小川響子がソロを披露。同月サントリーホールで開催される東京特別公演でも、このプログラムが演奏される。
「『系図』は谷川俊太郎さんの作品に付けられた、昔々から始まり、“家族”についての詩を経て未来へとつながっていく、本当に美しい曲。数ある武満さんの作品の中で一番好きかもしれません。『英雄の生涯』でも、途中コンサートマスターにより英雄の妻という“家族”が表されます。マーラー、R.シュトラウスなどの大規模な作品を年に一度は必ず取り上げたい、という考えのもと、この曲を選びました」

 名誉音楽監督の小泉和裕は、11月の第539回「権力者の肖像」に登場。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(独奏:中野りな)、没後50年となるショスタコーヴィチの交響曲第10番を取り上げる。客演陣のプログラムも、フランスの巨匠ジャン=クロード・カサドシュによる「幻想交響曲」(5月)や、2023年のPMFに客演していたトーマス・ダウスゴーによるブルックナーの交響曲第8番一本勝負(10月)など充実のラインナップ。

 日本特殊陶業市民会館 フォレストホールを会場に開催される「市民会館名曲シリーズ」(全5回)は、「ベートーヴェンPLUS」と銘打たれた。そのテーマ通り、ベートーヴェンとその周辺の作曲家の作品を軸にした選曲。同シリーズ100回目を記念する演奏会に登壇する川瀬は、ベートーヴェン「トルコ行進曲」からハイドン、シュニトケを経てモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」へとつなげる。

 この他、三井住友海上しらかわホールの閉館を受け、シリーズ「スペシャル・クワトロ」(全4回、会場:愛知県芸術劇場 コンサートホール)が新たに創設。桂冠指揮者・小林研一郎が若手ヴァイオリニストの旗手・周防亮介を迎えて名曲プログラムを披露する「コバケン・スペシャル」(Ⅲ・10月)など、注目の公演が並ぶ。さらに、名古屋フィル、愛知室内オーケストラ、セントラル愛知交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団の4団体が集結、各楽団のシェフ(川瀬、山下一史、角田鋼亮、秋山和慶)がブラームスの交響曲を指揮する「愛知4大オーケストラ・フェスティヴァル」も。どの指揮者+オーケストラがどの交響曲を演奏するかは、後日発表されるとのことで、続報が待たれるところ。

 川瀬と同じく、23年4月に特別客演コンサートマスターに就任した山本。名古屋出身でもあり、「名古屋フィルに参加できることを本当にうれしく思っています。今後も30年近く積み重ねてきたキャリアを活かして、微力ながら楽団の発展に寄与できれば」と期待を寄せた。シェフ、コンマス共に関係性を深めていく名古屋フィルの来シーズンから目が離せない。

名古屋フィルハーモニー交響楽団
https://www.nagoya-phil.or.jp