神戸文化ホール開館50周年記念事業としてヴェルディ《ファルスタッフ》を上演

左より:佐藤正浩/岩田達宗/黒田 博

 わいわいガヤガヤと人が集う時、そこには自然と「コメディ」の色合いが滲み出る。振られてしょげる者を「よくあることさ」と笑って慰めるさまも、セールで特価品を奪い合う姿も、はたから見れば可笑しいもの。喜劇とは、「他者の最も人間らしいひとこま」を覗き見して悦に入るものなのだ。

 それは、舞台芸術でも同じこと。喜劇のオペラを味わう人々は、合唱団と視線を一にする。要は、観客も「世間の目」としてドラマに参加し、演者勢と一体になってドラマを楽しむのだ。「みな、そういうところがあるよね!」と互いを赦しつつ、笑い合うのである。

 来る12月、兵庫県の神戸文化ホールが開館50周年の記念事業としてヴェルディの人気作《ファルスタッフ》を上演する。指揮の佐藤正浩(神戸市混声合唱団音楽監督)は先日行われた制作発表記者会見で「合唱団の発案でオペラを取り上げます。神戸市室内管弦楽団も参加しますし、ホールがあってコーラスとオーケストラが居れば、そりゃオペラですよ!」と明るく語り、演出の岩田達宗(神戸市出身)も「太っちょの老騎士ファルスタッフが女性陣からぴしゃりとやられるこのオペラは、『女性が男性をやっつける』ことで、社会の対立を皆で乗り越える、そんな物語です」と愉し気に抱負を語る。主演の名バリトン黒田博も京都市の生まれ、他のキャスト(合唱団からの起用も多い)も関西で活躍中の実力派ばかり。笑いに貪欲な人々が、「真の朗らかさ」を客席と分かち合う瞬間をお見逃しなく!
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2024年10月号より)

神戸文化ホール開館50周年記念事業
ヴェルディ:オペラ《ファルスタッフ》全3幕(イタリア語上演・日本語字幕付)
2024.12/21(土)14:00 神戸文化ホール
問:神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349 
https://www.kobe-bunka.jp/hall/