フレディ・ケンプのピアニズムが鮮やかに描き出す2つの「楽興の時」

 1998年のチャイコフスキー国際コンクール入賞後、世界各地で演奏。また、マスタークラスの指導、コンクールの審査員など幅広い活動を展開しているフレディ・ケンプが、入間と国分寺でリサイタルを開く。シューベルトの「楽興の時」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」、ラフマニノフの「楽興の時」というプログラム。シューベルトの「楽興の時」は即興的な小品6曲で構成され、各曲は軽やかで豊かな歌心と親しみやすい旋律が特徴。特に第3番の人気が高い。ラフマニノフの同名作品は作曲者のインスピレーションが色濃く表れた豊かなテクスチュアをもつ6曲構成で、ショパンの影響を感じさせるが、超絶技巧が随所に挟み込まれているのはラフマニノフならでは。今回は趣きの異なるシューベルトとのコントラストが堪能できる。

 さらにケンプにとってベートーヴェンは欠かせない作品で、日本でも何度も演奏しているが、「二度と同じ演奏はしない」ことをモットーにしている彼の新たな一面を見ることができそう。国分寺ではリサイタルに加えてコンクールの本選審査員を務め、公開マスタークラスも担当する予定。常に前向きで、挑戦する心を失わないケンプ。「作曲家の背景を知ること、作品の生まれた土地の文化などを知ること、本を読んだり絵を見たりすることが演奏を肉厚なものにしてくれる」と以前語っていたが、彼の演奏は、五感を刺激する、深い味わいのあるピアニズム。若きピアニストにもお手本となるに違いない。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2024年10月号より)

フレディ・ケンプ ピアノ・リサイタル
2024.12/8(日)14:00 入間市産業文化センター
問:入間市産業文化センター04-2964-8377
https://www.iruma-bunka.jp
12/14(土)14:00 国分寺市立いずみホール
問:国分寺市立いずみホール042-323-1491
https://www.kokubunji-izumihall.jp