小林研一郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

四半世紀ぶりの登場を渾身のチャイコフスキーで飾る

小林研一郎

 外山雄三や小澤征爾といった“長老”指揮者たちが鬼籍に入る中、近年ますます存在感を増しているのが1940年生まれの小林研一郎だ。音楽が大地にどっしりと根を張っているような揺るぎのないテンポ感、悠然とした歩みでオーケストラを鳴らし切るスタイルには“炎のコバケン”の異名が与えられてきた。84歳になった現在もそのパワーは衰えを知らず、全国のオケからオファーが引きも切らないだけでなく、先日は彼の名前を世界に知らしめた1974年のブダペスト国際指揮者コンクールでの優勝から半世紀を記念して、つながりの深いハンガリー・ブダペスト響とも熱い演奏を繰り広げたばかり。その名前は欧州にも轟いているのだ。

 そんなマエストロが11月には東京シティ・フィルの定期に登場する。前回の登壇は1998年のことなので、実に四半世紀を超えた共演となる。プログラムはチャイコフスキーの交響曲第4・6番と、ド直球勝負のシンフォニック・プログラムだ。コバケンのチャイコと言えば複数の楽団と交響曲全曲演奏にも繰り返し挑んできた歴史があり、わけても人気曲をカップリングした今回の演奏会は、まさにコバケン芸術の精髄に触れる格好の機会となろう。

 東京シティ・フィルと言えば昨年亡くなった飯守泰次郎が育ててきたオケだが、飯守と小林は同い年。ライバルとして、畏友として切磋琢磨しながら日本の音楽界を引っ張ってきた仲間だ。この四半世紀でぐっとパワーアップした東京シティ・フィルとの久々の共演に、小林もひとかたならぬ思いで臨むことだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年9月号より)

第374回 定期演奏会 
2024.11/14(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp