大野が一昨年より音楽監督を務めるブリュッセル・フィルとのコラボレーションの最初の成果は、スクリャービンの交響曲第2番のセッション録音。当たりの柔らかい艶消しのサウンドを巧みにブレンドしていくオケ、どっしりとしたリードによって壮大なスケール感を構築する大野、音像にくすんだ色合いを適度に施した録音が相まって、後に神秘主義へと傾倒していくスクリャービンの夢想的な性格が的確に捕まえられている。全5楽章の中心におかれた長大なアンダンテの桃源郷のような美しさや、冒頭のほの暗い主題が結尾で明るく帰ってくることによる勝利の暗示など、印象的な場面が随所にある。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年7月号より)
【information】
CD『スクリャービン:交響曲第2番/大野和士&ブリュッセル・フィル』
スクリャービン:交響曲第2番
大野和士(指揮)
ブリュッセル・フィルハーモニック
Evil Penguin Classic/東京エムプラス
XEPRC 0061 ¥3300(税込)