7月に第600回記念定期演奏会を開催
群馬交響楽団の「2024/25シーズン 定期600回記念」の記者懇談会が3月18日、都内で行われた。飯森範親が常任指揮者に就任してから1年というタイミングで、東京で発信の場を作ったのである。活動近況報告のほか、今年7月に第600回定期演奏会、2025年度には創立80周年を迎えるにあたり、今後の活動への意気込みと展望が語られた。登壇者は、飯森と、ソロ・コンサートマスター伊藤文乃、進行役の群響音楽主幹・上野喜浩。
現在、高崎芸術劇場で開催される定期演奏会のほかに、野外で群響の演奏を楽しめる「森のオーケストラ」、赤ちゃんも障がいのある方もぜひ会場で体験してほしいという「ふらっとコンサート」、クラシック&ポピュラーの2つのラインで展開する「GTシンフォニック・コンサート」シリーズ(高崎芸術劇場との共同主催)など、幅広い層に向けた企画を実施している。また、ファン獲得の試みとして、定期演奏会前日の公開リハーサルとランチ会(アフタヌーンティー会)、県内の移動音楽教室など、さまざまな取り組みを行い、その多くに飯森が精力的に参加している。
ここまで1年の活動について、飯森は「県民と群響の距離感の近さをすごく感じた1年でした。楽団理事でもある山本一太群馬県知事が、群響を本当に大切にしてくださっていることも感じました。さらに飛躍を続けて、県民の皆さんに喜んでいただける場を提供していかなければ」と振り返った。
音楽面では、23年度は全定期演奏会でモーツァルトの楽曲を組んだことについて、飯森は「モーツァルトは様々なジャンルの作品があり、毎回組み合わせることで、弦楽器を中心とした基本的なアンサンブル力にさらに磨きをかけていこう」という意図だったとし、すでに効果を実感しているという。
まもなく開館5年を迎える高崎芸術劇場の環境の良さも、群響の活動に大きな影響を与えている。大ホールでの公演に加えて、小ホールにあたる「音楽ホール」の魅力を活かした企画も進行中。
「高崎芸術劇場には約2000人の大劇場のホールと、約400人の音楽ホールがあります。音楽ホールの音響もすばらしく、『この空間で親密なアンサンブルをやりたい』とスタートしたのが室内楽シリーズです。楽員プロデュースということで、楽員1人ずつが出演者も曲目も全部決めて、その中に飯森プロデュースの室内オーケストラの公演も織り交ぜています」(上野)
同シリーズについて飯森は「スポーツに例えるなら、群響というチームはよく認識をしていただいていますが、その中で活躍している選手をより知ってもらえたら」と補足。
メンバーの顔が見える取り組みとしては、楽員ソリストの起用も、楽団のポテンシャルを高めるための重要な柱として位置づけられている。11月定期のブラームスの二重協奏曲でソリストを務めるコンサートマスター伊藤は「定期演奏会でソロを務めるのは、今回が初めてなので緊張もしているんですけれども、やりがいがあって楽しみにしています。楽員のソロにもぜひ注目していただきたいです」と笑顔をみせた。
YouTubeチャンネルの開設も、同様の意図で始められた試み。この日は、「群馬観光地コラボ」として楽員4人が伊香保温泉で収録した動画も紹介された。
上野主幹によれば、現在、2021年から5年間の「群響改革プラン」の途上にあり、「100万人当たりの演奏会入場者数を日本一にする」ことを目標にしているという。定期会員の数も着実に伸びているといい、様々な事業を行うことで集客につなげながら、楽団の更なるレベルアップと、安定的かつ継続的な経営を柱としていく。
そして、4月からの24年度についての話題では、多彩な演目が並ぶ10回の定期演奏会について、「お客様にも楽員にも、幅広い個性をもつアーティストたちと共演する体験をしてほしいという強い想い」から、海外の指揮者の起用を積極的に進めているという。10回の定期のうち5回が海外の指揮者、しかも全員初登場となる。
7月の第600回定期について、メイン曲のR.シュトラウス「家庭交響曲」は飯森の得意演目であり、「群馬県と高崎市、群馬交響楽団、それから県民の皆さん、定期会員の皆さんが、みんな一つのファミリーである、ということをこの600回定期で示したい」と選曲理由を語った。この回でコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を弾くマルク・ブシュコフについても、「最高のヴァイオリニスト。皆さん驚かれることと思います」と強く推していた。
創設時から地域に愛される楽団として歴史を重ねてきた群響。飯森マエストロのもと、さらなるファン獲得のために、さまざまなチャレンジとともに、次なるステージへと歩みを進める2024-25シーズンとなる。
第596回定期演奏会
2024.3/23(土)16:00 高崎芸術劇場 大劇場
東京定期演奏会
2024.3/24(日)15:00 サントリーホール 大ホール
指揮/飯森範親(群響常任指揮者)
ピアノ/ジャン・チャクムル *
モーツァルト/ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466 *
ブルックナー/交響曲 第9番(コールス校訂版)
群馬交響楽団
http://www.gunkyo.com