語りとともに紡ぐ、ルネサンスの異端児の波乱に満ちた生涯
チェンバロとヒストリカル・ハープの二刀流で八面六臂の活躍を続ける西山まりえが、歴史上のヒーロー・ヒロインを取り上げるコンサートシリーズ「歴女楽」も今回で10回目。
その節目に取り上げるのが、浮気を続ける妻とその間男を殺したことで、音楽史上最もスキャンダラスな事件の当事者となりながらも、その後にはルネサンス音楽の行き着く先を示すかのようなマドリガーレを残した驚異の作曲家ジェズアルド。今回は「銀座ぶらっとコンサート」のスペシャルということで、ゲストとしてソプラノの松井亜希など声楽アンサンブル5名と語りに宮本益光を配し、ジェズアルドのマドリガーレや同時代の音楽を演奏するだけでなく、作曲家本人、その妻たち、音楽仲間などを演じて、その生涯を描こうという欲張りな企画だ。
事件から数年後、フェラーラ大公の姪との再婚のために滞在したその地での様々な音楽体験、芸術仲間との交わりが、ジェズアルドの音楽に大きな変化をもたらす。以降に書かれた作品はあたかも熟した果実の香りのように濃密。晩年のマドリガーレは、そこに罪の意識から逃れられない翳りと悲しみと死の気配をまとい、誰も到達しえなかった響きへと聴くものをいざなう。
今回のコンサートではジェズアルドの作品を中心に、その後に訪れるバロックへの変化をモンテヴェルディやカッチーニの甘美な愛や悲しみを歌った曲、さらにサンチェスの大作「悲しみの聖母」などが描き出す。西山まりえとゲストの声楽アンサンブルが時代の先端であり終端にいたジェズアルドの激動の一生を、音楽と物語でどのように紡ぐかにも乞うご期待!
文:いのうえとーる
(ぶらあぼ2024年2月号より)
2024.4/26(金)13:30 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
https://www.ojihall.jp