Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム 《ラヴェル最期の日々》(新制作)

“攻め”のコラボで描き出される大作曲家の晩年

左より:加藤昌則/岩崎正裕/小㞍健太 ©Carl Thorborg/西尾友樹

 東京文化会館が青少年向けにオリジナル舞台作品を贈る「シアター・デビュー・プログラム」で、作曲家・ピアニストの加藤昌則と演出家の岩崎正裕がタッグを組み、《ラヴェル最期の日々》を制作する。

 希代のメロディーメーカーとして知られるラヴェルだが、晩年は原因不明の病で記憶や言語に大きな障害を抱えた。頭の中は音楽であふれているのに、それを楽譜に書き留めることができなくなってしまったのだ。この悲劇を、ラヴェルの隣人の目を通じて描き出すというのが本作の趣向。

 ラヴェルを加藤と世界的に活躍するダンサーの小㞍健太が、ラヴェルの隣人を劇団チョコレートケーキの西尾友樹が演じる。音楽は「ボレロ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」など誰もが知っているラヴェル作品をメインに、自由な引用や加藤の新作なども加えて構成。ヴァイオリンに東京文化会館が主催する東京音楽コンクールで第2位&聴衆賞を獲得した橘和美優、チェロに都響の清水詩織を起用するほか、ラヴェルが用いなかったバンドネオン(演奏:仁詩 Hitoshi)を編成に交えたのも異色だ。

 生の舞台の魅力と深さを若者たちに体感してもらうプログラムだが、認知にまつわる病や不安は、考えてみれば極めて現代的な問題でもある。音楽監督の加藤は、演者たちが持っている力をぶつけ合う濃密なコラボレーションを通じ、単にラヴェルを聴こうと思って来た人をいい意味で裏切る、一つのカテゴリーに収まらない舞台にしたいと意気込む。そのテーマとドラマはあらゆる年代に開かれたものとなるのではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年2月号より)

2024.2/17(土)、2/18(日)各日14:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp