東京の春の音楽シーンを彩ってきた「東京・春・音楽祭」が2024年、20周年を迎える。10月30日、東京文化会館にて概要発表会見が行われ、同音楽祭実行委員長の鈴木幸一、事務局長の芦田尚子に加え、東京文化会館音楽監督の野平一郎、東京国立博物館館長の藤原誠、上野観光連盟理事長の長岡信裕が登壇した。
2005年に「東京のオペラの森」として始まり、2009年に現名称に改称した「東京春祭」。記念すべき20回目の2024年は、3月15日から4月21日にかけて、有料公演約70公演の開催を予定している。実行委員長の鈴木は、今夏バイロイト音楽祭で上演された、AR技術を導入した《パルジファル》を一例として挙げながら、「今回は次のステップへ進むための一つの区切りとしてとらえ、今後も数十年にわたって音楽祭を持続するため、『変わらない』クラシック音楽とどう向き合っていくか、考えを巡らせていきたい」と、節目を越えた先の音楽祭の方向性を模索していることを明かした。
主会場となるのは“文化の殿堂”、東京文化会館。音楽監督の野平は、同会館と「東京春祭」の関わりについて、以下のように語った。
「今回は例年にもまして多彩なプログラムですが、その中でもアンサンブル・アンテルコンタンポランという、現代の音楽にとってなくてはならない演奏団体を当館にお招きできることは非常に楽しみです。
今日の音楽祭は、数え切れないほど演奏された“名曲”ばかり取り上げるものと、現代音楽に関心のある聴衆しか受け付けないものと、ふたつの方向に専門化していると感じています。バランスの取れた『東京春祭』のような存在は稀有で、これからの音楽祭のモデルになり得るのでは、と考えていますので、今後も協力関係を続けていけたらと思います」
大ホールでは、4演目のオペラが上演される(すべて演奏会形式)。目玉となる「ワーグナー・シリーズ」は、マレク・ヤノフスキ指揮、NHK交響楽団による《トリスタンとイゾルデ》で、ワーグナー主要10作品が完遂される。「プッチーニ・シリーズ」はピエール・ジョルジョ・モランディ指揮、東京交響楽団の《ラ・ボエーム》で、日本でも人気のステファン・ポップが出演する。本音楽祭の常連であるリッカルド・ムーティは《アイーダ》(管弦楽:東京春祭オーケストラ)を指揮。昨年まで同時期に開催されていた「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」は、9月に時期を移しての実施となる。さらに、セバスティアン・ヴァイグレと読売日本交響楽団のコンビが、2005年の音楽祭第1回の上演作品である《エレクトラ》に取り組む。
加えて同ホールでは、ヤノフスキ&N響による《ニーベルングの指環》ガラ・コンサートや、上野水香・東京バレエ団による『ボレロ』など、20周年を記念する公演も開催。毎年恒例の「合唱の芸術シリーズ」では、ローター・ケーニヒス指揮で、生誕200年を迎えるブルックナーの「ミサ曲 第3番」を取り上げる。
小ホールでは多数のリサイタルや室内楽公演が開催されるが、注目はベートーヴェンの大家、ルドルフ・ブッフビンダーによるピアノ・ソナタ全曲演奏会。他にも、ウィーン・フィルコンサートマスターのライナー・ホーネックや、イノン・バルナタン(ピアノ)、吉井瑞穂(オーボエ)&川口成彦(フォルテピアノ/チェンバロ)など国内外の一流アーティストが集結する。「歌曲シリーズ」や「マラソン・コンサート」などの人気企画も継続。
上野の各美術館・博物館を会場とする「ミュージアム・コンサート」では、個性豊かなプログラムが勢ぞろい。「東京春祭 for Kids」の一環で、バイロイト音楽祭との提携公演として上演される「子どものためのワーグナー」は、同音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナーによる監修・演出で《トリスタンとイゾルデ》を予定。
アニバーサリーを記念し、有料公演5公演、20公演来場での特典プレゼントや、東京文化会館で平日に開催される公演が通い放題になるU-25向けスペシャルチケットなどの「お客様還元企画」も。チケットは11月11日より順次発売される。
東京・春・音楽祭 2024
2024.3/15(金) 〜4/21(日)
https://www.tokyo-harusai.com