シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

二人の巨匠が20世紀東欧作品でみせるハイパフォーマンス

 鬼に金棒。読響にカンブルランだ。2010年代、日本のオーケストラ・シーンを鮮烈に彩ったコンビが、今年も魅力的かつスパイシーなプログラムを披露する。

 生誕100年のリゲティ、そして生誕110年のルトスワフスキを軸とした演奏会だ。プログラム前半と後半、それぞれの頭にヤナーチェクの作品を置く。民族的なエッセンスを斬新な音響で、力強く、そして神秘性を帯びて奏でられるヤナーチェク。その語法や響きを拡大、拡張するかのように、リゲティやルトスワフスキへ繋がっていくという趣向が心憎いばかりだ。

 ヤナーチェクの珍しい作品、バラード「ヴァイオリン弾きの子供」でスタート。続くリゲティのピアノ協奏曲には、スペシャリストのピエール=ロラン・エマールが登場、ポリリズムの極致たる逸品を奏でる。もはや前衛でも伝統的でもない、多様性の象徴たる協奏曲が鮮やかに鳴り響く。

 後半はヤナーチェクの序曲「嫉妬」から、ルトスワフスキの「管弦楽のための協奏曲」へと繋ぐ。「嫉妬」での情熱的な動機が、より抽象化されてルトスワフスキ作品へと昇華していくよう。「管弦楽のための協奏曲」では、それぞれの奏者のテクニック、エネルギッシュなリズムとサウンド、そして色彩表現の鮮やかさに注目したい。終楽章の最後に出てくるコラールでは、カンブルラン持ち前の明るい響きが過不足なくホールを満たしてくれるに違いない。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年11月号より)

第633回 定期演奏会 
2023.12/5(火)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp