香港ダンス・カンパニー『CONVERGENCE 収斂』 ~中国舞踊と格闘技の相乗~

香港を代表するカンパニーが贈る「武術」と「舞」の融合

(c)Chinese Dance × Martial Arts Convergence, 2023.
Courtesy of Hong Kong Dance Company.

 「武」は「舞」たりえるのか——。これは繰り返し問われてきたテーマである。ともに身体操作における技術体系ではあるが、武術はいわば機能美であり、表現に使うのは容易ではない。この難題に挑んだのが本作、『CONVERGENCE』である。

 観客は舞台上のダンサーの武術的な動きが、あまりにもシャープで高速なことに目を見張るだろう。地に根が生えたような安定感の下半身、そこから繰り出される可動域の広い動きは多彩で、「武」と「舞」は究極の一体化を見せている。これは3年間、ダンサー達が中国武術の師匠について学んだ結果だという。ソロはもちろん群舞にも様々な変化があり、ダンスカンパニーとしての地力の高さを堪能できる。

 アジアのダンスはここ20年ほどで急速に発達してきた。香港もいち早くコンテンポラリー・ダンスに取り組み、牽引してきた存在だ。なかでもこの香港ダンス・カンパニー(HKDC)は1981年に設立され、2001年以降は香港特別行政区政府から助成を受けている。芸術監督のヤン・ユンタオ(楊雲濤)は2013年から芸術監督を務め、その作品は世界各地で上演されている。

 作品に大きな効果を与えているのが、背景の映像である。墨絵のように変化する模様は水面にも雷雲にも見える。ダンサーの直線的な動きを映像の曲線が包み込んでいく。やがてモノトーンのはずの舞台が、様々な色合いを帯びて見えてくるはずだ。アジアならではの美意識と挑戦に満ちた、刺激的な作品といえるだろう。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ2023年11月号より)

2023.11/25(土)14:00 18:00 TOKYO FMホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777 
http://www.concert.co.jp

他公演 
2023.11/29(水) 石川県立音楽堂 交流ホール(オフィス・ハンカ090-2035-2057)