心にこだまする響きを織込んだ70分間のストーリー
ピアニストのアリス=紗良・オットがトルコ人建築家ハカン・デミレルの映像デザインを得て創造した夢のような70分間、「Echoes Of Life」が1年半ぶりに日本へ戻ってくる。2020年初めに降ってわいた新型コロナウイルスの世界拡大で演奏会の中止や延期が相次ぐ中、アリスが仲間たちを巻き込み立ち上げたプロジェクトだった。ドイツ・グラモフォンのCDリリースが先行、21年11月から世界ツアーを決行した。日本では22年5月20日の倉敷から30日の東京まで7ヵ所を回った。母の国へ戻るのは4年ぶりで「日本の食材をスーツケースいっぱい、買い込みました」。サントリーホールの舞台に現れたアリスはまず、流暢な日本語でプロジェクトの趣旨を語り、「生のこだま」という邦題を自ら与えた。
今回の音楽はショパン「24の前奏曲」の間に「7つのインタールード(間奏曲)」をはさんで展開する。7人の作曲家はトリスターノ、リゲティ、ロータ、ゴンザレス、武満徹、ペルトとアリス自身。デミレルの映像は抽象と具象、聖と俗、洋の西と東などの両極を揺れ動きながら、人が生きる場所、祈る場所、考える場所などへの様々な示唆を豊かに与える。アリスのピアノも「再現解釈者」の域にとどまらず、自身の明確な音のイメージと作品に対する考え方、映像との結びつきを常に一体化させたもので、旧来のリサイタル像とは一線を画す70分間だ。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2023年11月号より)
2023.11/30(木)19:00 すみだトリフォニーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp
他公演
2023.11/22(水) 大阪/フェスティバルホール(キョードーインフォメーション0570-200-888)
11/25(土) 足利市民プラザ(0284-72-8511)
11/26(日) けんしん郡山文化センター(KFB福島放送 営業推進部024-933-5856)
11/28(火) 札幌コンサートホール Kitara(オフィス・ワン011-612-8696)
12/1(金) アクトシティ浜松(中)(浜松市文化振興財団053-451-1114)