サクソフォン界の若手トップランナー、上野耕平の4年ぶり5枚目のソロ・アルバム。1930~50年代に書かれたフランスの作品を集め、しかもすべてが名手マルセル・ミュール絡み(委嘱や献呈作、彼が教授を務めるパリ音楽院の試験曲)という筋の通った内容だ。上野は澄んだ音色で鮮やかな演奏を展開。冒頭の「スカラムーシュ」から精彩と生気に富んだ音楽が耳を奪い、次々に繰り出される名技と自在の表現に魅せられる。無伴奏のカデンツァがある後半のプラネルとデザンクロ、全曲無伴奏のボノーの各作は特に聴き応え十分。ピアノの高橋優介も的確な助演者となっている。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年11月号より)
【information】
CD『Eau Rouge/上野耕平』
ミヨー:スカラムーシュ/デュボワ:ディヴェルティスマン/ボザ:アリア/プラネル:プレリュードとサルタレロ/ボノー:ワルツ形式によるカプリス/デザンクロ:プレリュード、カデンツァとフィナーレ
上野耕平(サクソフォン)
高橋優介(ピアノ)
イープラスミュージック
em-0033 ¥3000(税込)