地元の中学生とともに届ける日本の美しきハーモニー
東京混声合唱団の調布公演。中学生との合同演奏や日本の歌プログラムなど、理屈抜きで楽しめるファミリーコンサートではあるけれど、日本が世界に誇る老舗プロ合唱団ならではの凄みもずっしり伝わってくるはず。
指揮の山下一史と東混の初共演は2018年の林光《原爆小景》。あの曲をずっと歌い継ぐ東混と、広島出身の山下が出会って何かが起こらなかったはずはない。現在、彼に寄せるメンバーの信頼は厚い。
《日本抒情歌曲集》はその林光が1964年から東混のために書き続けた編曲集。東混にとっては血肉のようなもので、曲が合唱団を育て、演奏が作品にいっそうの力を与えてきた。シンプルな語法の編曲に、それだからこその“真実”が潜んでいるのは林光ならでは。
いっぽう三善晃《唱歌の四季》も東混を象徴するレパートリー。合唱が、そしていかにも三善らしいピアノが多彩な光を放ち、親しい日本の歌にさまざまな表情を与える。アマチュア合唱団も好んで歌う作品だが、高い声楽技術が要求される難曲。終曲〈夕焼小焼〉の最後、ソプラノの最高音Cに達するエネルギーと緊張の持続は、東混で聴くと鳥肌が立つ。
他に、合唱界で人気の四人の作曲家、上田真樹、相澤直人、木下牧子、三宅悠太の「出世作」を並べたのも面白い視点。
調布市立神代中学校合唱部と同第四中学校吹奏楽部がともに歌う(「ブレスつながり」で、練習に合唱を採り入れる吹奏楽部は少なくないのだそう)。1ヶ月前から東混メンバーの指導もみっちり。もちろん山下とのリハーサルを経て臨むプロとの共演は一生の思い出になるだろう。
文:宮本明
【Concert Information】
◎東京混声合唱団 in CHOFU
2023.11/18(土)15:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
指揮:山下一史
ピアノ:鈴木慎崇
合唱:東京混声合唱団
【ゲスト出演】作曲家:上田真樹
♪モーツァルト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」
♪林光編曲「混声合唱のための日本抒情歌曲集」より
「箱根八里」「この道」「からたちの花」「椰子の実」「浜辺の歌」
♪杉本竜一「Believe」
♪相澤直人「ぜんぶ」
♪佐藤眞「大地讃頌」
♪木下牧子「鴎」
♪三宅悠太「子守唄」
♪三善晃編曲「唱歌の四季」
「朧月夜」「茶摘み」「紅葉」「雪」「夕焼小焼」
上田真樹
♪「海のあなたの」
♪「心に花を咲かせよう」(調布市内の中学生との共演曲)
♪「うたをうたうとき」(調布市内の中学生との共演曲)ほか
※プログラム・曲順等は変更になる場合があります
助成:芸術文化振興基金/自治総合センター