アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

文豪の音楽ファンタジーを一気に堪能

 今シーズンの東京フィル定期の締めくくりは、首席指揮者アンドレア・バッティストーニがおくる「シェイクスピアとチャイコフスキー」プログラム。しかも、幻想曲「テンペスト」、「ロココの主題による変奏曲」、幻想序曲「ハムレット」、同じく「ロメオとジュリエット」という滅多にないラインナップが目を引く。これは様々な点で興味深い公演だ。

 まずは今年没後130年のチャイコフスキー。同楽団2月定期のプレトニョフ指揮「マンフレッド交響曲」に続いて、今回も劇的でロマン溢れるレア作品「テンペスト」「ハムレット」を生体験することができる。シェイクスピア文学を音楽化したチャイコフスキー作品をまとめて聴けるのも貴重だし、7月のチョン・ミョンフン指揮《オテロ》の超名演を踏まえた、同作家の戯曲の音楽集成という点でも意義深い。さらには、2019年ARDミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人初優勝を遂げた後の活躍が目覚ましい佐藤晴真の“今”を明示する「ロココ」が、コンサートに彩りを加える。

 そしてもちろんバッティストーニの指揮。ロシアものはイタリアものと並ぶ彼の柱の一つであり、以前インタビューした際にも、「チャイコフスキーは一番好きな作曲家。エモーションを与えてくれるし、イタリアとロシアの音楽は情熱的でロマンティックで歌に溢れているといった共通点もある」と語っていた。高熱量で躍動的で生命力漲る彼の持ち味は、まさにチャイコフスキーにピッタリ。ここは、レア曲の魅力発見をも喚起する、エキサイティングな“オーケストラ・ドラマ”に酔いしれたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年11月号より)

第992回 サントリー定期シリーズ
2023.11/10(金)19:00 サントリーホール
第993回 オーチャード定期演奏会
2023.11/12(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第158回 東京オペラシティ定期シリーズ
2023.11/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
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