複雑な曲の精髄を鮮明に聴かせることにかけて現在屈指のコンビ、ジョナサン・ノットと東響が、ショスタコーヴィチの謎多き大作、交響曲第4番で強烈な名演を実現した。実演ではその精度と大迫力に圧倒されたが、録音でもいかに正攻法で楽曲の真髄に迫った快演だったかが確認できる。第1楽章のどんなに輻輳する場面でも分離のよさと明度が保たれ、破壊的な大音響がクリアに響き渡り、プレストの超難所が明晰かつ熱狂的に奏でられる。逆に第3楽章の単純な音型の連続する場面は、あえてオーケストラを追い込み、ギリギリを攻めて興奮を誘うなど、ノットの劇的感覚も見事。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年11月号より)
【information】
CD『ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 /ジョナサン・ノット&東響』
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番
ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団
収録:2022年10月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00823 ¥3850(税込)