印田千裕 & 印田陽介 デュオリサイタル ~ヴァイオリンとチェロの響き Vol.12~

8本の弦が生み出す唯一無二の音楽世界

左:印田陽介 右:印田千裕

 ヴァイオリンとチェロの二重奏でレギュラー活動を行っている世界でも稀なデュオ、印田千裕と印田陽介の姉弟が、12回目のリサイタルを行う。これはレアな形態&楽曲を堪能できる貴重なチャンスだ。

 ヴァイオリンの千裕は、東京藝大と英国王立音楽院で研鑽後、ソロや室内楽で活躍。東京オペラシティの「B→C」にも出演し、東京ユニバーサル・フィルのゲストコンサートマスターも務めている。チェロの陽介も、東京藝大とプラハ音楽院で学んだ後、同じくソリストとして幅広い活動を展開中。2人は、陽介が帰国した2012年にデュオを組み、編曲ものを含む多彩なコンサートを行うと同時に、定期演奏会にあたる年1回のリサイタルを続けている。この形態は、2本の弦楽器が交わる独特の響きと、「三、四重奏にはないソリスト的な対話や丁々発止のやりとり」が魅力(2021年インタビューより)。ただしその醍醐味は、2人が高い技量と姉弟ゆえの親和性を兼備しているからこそ生まれるものであろう。

 彼らが「1年がかりで準備し、最も多くリハーサルをするので、活動の中でも比重が高い」と語るのがデュオリサイタル。今回のプログラムはまず、古典派ベートーヴェンの二重奏曲第2番、チェロの学習者にはお馴染みドッツァウアーの「ウィリアム・テル」によるデュオ・コンチェルタンテとチェロ奏者サレスキの「ラ・フォリア」に基づく作品。ここまでは親しみやすい音楽だ。そして20世紀ギリシャの大家スカルコッタスの二重奏曲は、難技巧の応酬が耳目を奪う注目曲。さらには先鋭的な現代音楽シーンで活躍する鈴木治行の作品で、新たな世界を提示する。我々も稀少なデュオを体感し、楽しみの幅を広げたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年11月号より)

2023.11/23(木・祝)14:00 王子ホール
問:マリーコンツェルト music@malykoncert.com
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