甲斐 誠(指揮/ジャパン・ウィンド・プレイヤーズ音楽監督)


 吹奏楽の“強豪校”・埼玉栄高校を経て洗足学園音大で学んだ甲斐誠は、現在「ジャパン・ウィンド・プレイヤーズ」の音楽監督を務める新進指揮者。オーディションで選ばれた気鋭の若手が集うこのプロ吹奏楽団は、今年5月に第1回定期演奏会を開催し、このほど初のCD『深層の祭』もリリース。緻密さを重視したウィンド・アンサンブル型である点が貴重な特徴だ。
「基本的には“楽譜に忠実”がコンセプト。大編成ではなく、パートごとの音色と役割が明瞭に感じ取れる編成や選曲を旨とし、演目は吹奏楽のためのオリジナル曲に絞っています」
 CDは、第1回定期と同演目だが完成度の高いセッション録音。「大作曲家の吹奏楽曲=誰が聴いても名曲」に焦点を当てた内容となっている。
「冒頭のコープランドは、若い奏者たちの元気のよさとセッション録音による落ち着きを併せ持ったファンファーレ。ホルストの第1組曲は、私自身の考えるブリティッシュなテンポを演奏に生かしています。特に第3曲は、しっかり行進できる『マーチ』と捉えて通常より遅め。シェーンベルクの『主題と変奏』は、変容が複雑な難曲ですが、これもセッションならではの仕上がりになっています。三善晃の『深層の祭』は、楽器法や音の雰囲気が独特で、昔はこんな作品がコンクールの課題曲だったことを伝えたい。グレインジャーの『リンカンシャーの花束』は、現代の作品とは異なる色彩感やハーモニー、同作曲家特有のリズムや節回しを前面に出し、ウォルトンの『王冠』もイギリスのマーチのテンポ感を意識しました」
 聴くと端整で美しい新鮮な演奏。独自のワン・ポイント録音も、自然なサウンド作りに寄与している。
 また今年12月には、第2回の定期演奏会を開催。前半は室内楽、後半は吹奏楽という清新な構成が興味深い。
「新進気鋭の奏者たちをお披露目する意図と、今回も録音し、両方を1枚のCDで楽しんでもらうという狙いがあります。前半は、マリンバと和太鼓等による三木稔─邦人作曲家を入れるのも同団のコンセプト─の作品、ストラヴィンスキーの八重奏曲、ネリベルのクラリネット・アンサンブル作品、記念イヤーのR.シュトラウスの管楽セレナードを並べて、大半のメンバーが重複なく出演します」
 後半は、リードの「アルメニアン・ダンス パート1、2」。
「有名曲ですが、当楽団でしか出せない音が絶対にあると思っています。それはふくよかで柔らかく豊かな音。そうしたストレスを感じないサウンドによるリードがどんな演奏になるのか? を、ぜひ聴いて欲しいと思います」
 今後は「定期の回数を増やし、アマチュアとの交流や海外進出も図りたい」との由。平均年齢約28歳の若い吹奏楽団の発展を、大いに期待したい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

ジャパン・ウィンド・プレイヤーズ 第2回定期演奏会
12/10(水)19:00 多摩市民館
問:ジャパン・ウィンド・プレイヤーズ事務局070-6426-8858
http://officejwp.wix.com/jwp-web

kaicd1205【CD】『深層の祭』
マイスター・ミュージック
MM-2199 
¥2816+税